[社説]インフラ老朽化 点検急ぎ計画的更新を

埼玉県八潮市の県道交差点で、道路が陥没し、走行中のトラックが転落する事故が起きてから10日以上がたつ。
穴は徐々に拡大し、幅約40メートル、深さが最大15メートルにまで広がっている。地下約10メートルにある下水道管の破損が原因とみられる。
下水道管や雨水管の他、通信ケーブルなども損傷し、洗濯や風呂の使用が制限されたり、インターネットや固定電話が利用できなくなるなど、住民生活に大きな影響が出ている。
行方不明の運転手の捜索とともに、原因究明と再発防止策が急務だ。
陥没を引き起こした下水道管は1983年の供用開始から40年以上がたち、老朽化が進んでいた。
下水道管の老朽化は全国的な問題だ。
国土交通省によると、全国にある下水道の総延長約49万キロのうち50年の標準耐用年数を超えた管路は約3万キロ。20年後には約20万キロに急増する見通しだ。下水道が原因の道路陥没は2022年度に約2600件発生している。
下水道法は、管理者である自治体に定期点検を義務付けるが、現在の対象は腐食の恐れが大きい下水道管に限られ、ペースは5年に1回。これ以外に全国共通のルールはなく、どの程度のペースで点検するのかは各自治体に委ねられている。
同じような事故が起きないよう、県内の自治体には、独自に点検を実施してほしい。危険な箇所を特定し、優先して修繕や更新をする必要がある。
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県内でも水道インフラの老朽化対策は大きな課題である。
昨年1月、県企業局が管理する、名護市の久志浄水場から西原町の西原浄水場に送水する導水管に穴が開き、漏水する事故があった。
導水管は設置から48年が経過し、法定耐用年数の40年を超えていた。老朽化による劣化で水圧に耐えられず破損した可能性が指摘された。
18年度に更新の予定だったが、国の交付金が減額され、予算が確保できずに見送られた。
人口減少に伴う使用料収入の落ち込みや物価高騰、維持管理に当たる技術職員の不足など、水道インフラを取り巻く課題は山積している。
だが、施設や設備の経年劣化は確実に進む。各自治体には、先を見据えた計画的な予算確保や修繕・更新の実施が求められる。
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政府は、今回の事故を踏まえ、国土強靱(きょうじん)化推進の重点方針に上下水道などのインフラ老朽化対策を据える。
6月をめどに、国費に自治体支出分や民間投資を合わせた総事業費を含めた実施中期計画を策定する。石破茂首相は約15兆円規模を投じることを表明している。
上下水道は住民生活に欠かせないインフラである。問題が起きれば、直ちに生活に支障が出る。今回のような事故が二度と起こらないよう、国は着実に整備を進めてほしい。

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