[社説]早くも「トランプ流」 日本は独自の役割探れ

ハッタリという言葉には「相手を脅すように大げさに言ったり行動したりすること」との意味がある。
米大統領就任を間近に控えたドナルド・トランプ氏の発言は、その意味で言えば「ハッタリ政治」そのものだ。
米国南部に面するメキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に改めると表明したり、「パナマ運河をパナマに渡したのは大きな間違いだった」と述べ、管理権返還を要求したり。
果ては戦略的に重要な北極圏に大部分が位置し、現在、デンマーク領になっているグリーンランドについて、安全保障上の理由から米国が購入し米国領にするとの考えも示した。
言いたい放題である。
パナマ運河もグリーンランドも、中国が強い関心を示している地域。トランプ氏の一連の発言は、決して唐突に飛び出したものではない。
ハッタリをぶつけ、高関税をちらつかせ、ディール(取引)に持ち込み、望む成果を得る。これが「トランプ流」だ。
不法移民を追い出し、移民の米国流入を止める。同盟国に対して関税で揺さぶりをかけながら防衛費増を求める。
これらの施策がトランプ氏の自国第一主義である。
「ハッタリ政治」が言葉だけにとどまらず実行に移されれば、米中間の貿易戦争、防衛分担を巡る同盟国とのあつれき、移民問題を巡る関係国とのきしみは避けられない。
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トランプ氏の就任に不安や懸念を抱いている人々は少なくない。
米国への移民問題を抱えているメキシコの人々がそうだ。
パレスチナ自治区ガザの人々は、極端なイスラエル寄りの政治姿勢を示す大統領の誕生で事態がいっそう悪化することを恐れている。
ロシアの侵攻を受け苦戦しているウクライナは「戦争を終わらせる」というトランプ氏の発言に懐疑的である。米国の援助が打ち切られ、ロシアを利するような停戦が提案されかねないからだ。
韓国や台湾の人々の中にも、期待と不安が交錯している。
日本はどうか。
石破茂首相とトランプ氏は、政治家としての肌合いが著しく異なっている。とても「馬が合う」関係にはなれそうもない。
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だが、見方によっては、そこに石破政権が独自性を発揮することのできる可能性が潜んでいる、とも言える。
対中包囲網を強化するため日本に法外な防衛費増額要求を突き付ける可能性がある。これまでのように唯々諾々と従うだけでは、国際社会が日本に求めている役割を果たすことにはならない。
東南アジア諸国連合(ASEAN)や「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国とも連携し、非軍事的支援や紛争回避のための対話を進めることが、日本に対する評価につながる。

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