【新潟】クラブ初のルヴァン杯準優勝に導いた秋山・稲村を直撃!高校の先輩後輩コンビが語るお互いの素顔

明治安田J1リーグに再昇格し、2季目を戦ったアルビレックス新潟。ボールの支配率を高めて、選手個人の能力に依存することなく、組織的に攻撃を構築する「ポゼッションサッカー」を展開するアルビの中で、ボールに関わる回数・1試合平均パス数がトップ(J1リーグの中でもトップ)でチームの中核を担うのが、秋山裕紀だ。そして、長いパスでチャンスを生み出す「蹴れる」左利きのセンターバックとして注目されるのが、現在東洋大学4年で特別指定選手の稲村隼翔。今季副キャプテンとしてチームを引っ張ってきた秋山と、大学生ながら活躍が光る稲村の前橋育英高校出身コンビを取材した。
プロ6年目の秋山は、ボランチとしてリーグ戦・カップ戦合わせて45試合に出場。昨季の32試合から、出場機会を大きく増やしている。秋山裕紀:「アルビは、誰が出ても同じようなサッカーは間違いなくできると思っていますし、その中でコンスタントに試合に出続けられているっていうことは自分としてはすごくありがたいことです。今季戦っていくなかで自分の中で見られなかった景色っていうものも課題として浮き彫りになっている部分はあるので、それに対して練習のなかでチャレンジしていきたいなとは思っていますし、出たからにはしっかりアルビレックス新潟のために戦うっていう気持ちを持って日頃やっています」さらに今季は、副キャプテンに任命され、キャプテンマークを巻いて試合に出ることも多くなった。秋山裕紀:「個人としてパフォーマンスが非常に良ければ満足のいくゲームだったっていうのが去年までのゲームでしたけど、今年は自分がうまくいかなくてもチームが勝てればそれに越したことはないですし、チームっていうものを最優先で考えるようになりました。そういう意味ではメンタルの持ち方とか試合に対する姿勢っていうところは個人よりはまずチームっていうところを優先するようにはなったので、そこが大きく変わったところかなっていうふうに思います」一方、秋山の副キャプテンとして動きについて、稲村は…。稲村隼翔:「高校時代1年間外からですけど見ていたのと今年を比べてもやっぱり全然違うなっていうのは印象はあって、自分のことよりもチームを優先しているなっていう感じですね。」
こう語る稲村は、秋山の前橋育英高校サッカー部の後輩だ。秋山が3年生の時に稲村は新入生として入部した。秋山裕紀:「稲村のことはわかっていました。FC東京ユースから来て、いい左利きの選手でした。(稲村は)当時ボランチをやっていたので各学年のボランチの選手はやっぱり自分も同じポジションなので気にするように見ていて。左足からのフィードだったりとか、なによりサイズがあったので、この選手が左利きでボランチでこれだけのサイズがあったらすごく面白そうだなっていうのは見ていて思いました。ただ、まさかセンターバックにコンバートしてここまでやるとは思っていませんでした」高校の先輩として、秋山は稲村の動向を気にかけていたという。秋山裕紀:「彼のチームメイトの中には高校からプロになった選手もいて、たぶん悔しい思いをして自分もプロになりたいっていう思いで東洋大学に行って。本当に人一倍努力したからこそ今があるとは思っているので、もっともっと上を目指してもらいたいですし、自分も彼に負けないように常日頃から努力をしていく必要はあるかなというふうに思っているので、同じチームでもう一度プレーできるっていうのはすごくありがたい」稲村隼翔:「自分は1年で裕紀さん3年だったのでそんなに近くはなかったですけど、プレーしている姿は本当にずば抜けて上手でしたし、ピッチ外でも熱い思いを誰にでもぶつけられるっていうところは自分もすごいなって思って見ていました。チームがいい方向に向くように発言したり、自分が納得しなくてもチームのために戦うっていうところは今と共通しているんじゃないかなって思います」
稲村のアルビレックス新潟加入内定の発表があったのは、2023年。稲村はまだ大学3年のころだったが、オファーがあったときのことを語ってくれた。稲村隼翔:「アルビからのオファーは素直にうれしかったですし、そのうれしさのなかにも裕紀さんがいるっていうこともすごく大きかったです。キャンプで練習参加して、チームのスタイル的にも自分のプレースタイルと合っていると思いましたし、千葉さんや舞行龍さんのような偉大な先輩とやれることも大切だなって思いました。でも本当に裕紀さんがいるからっていうのも大きな理由です」これに対して秋山は…秋山裕紀:「オレがいるからっていうのはアレですけど(笑)。でも自分としては稲村がセンターバックでやってくれたらやりやすさは人一倍ありますし、なによりも彼の持っているこの左足っていうのは本当に武器になるので。心の中では『早くアルビに決めろ』っていうのは内心思っていました。やっぱりほかのクラブからも争奪戦になるのは、自分がスカウトなら声をかけるので、そういう意味では早く決めろっていう感じではありました」相談に乗るなかで、高校、そしてクラブの先輩として新潟というチームのことを事細かに伝えたという。秋山裕紀:「でも本当、彼の選択を自分のせいで失敗にはしてほしくなかったので、アルビのよさも伝えたし環境面の話もしましたし、そのうえで『自分でほかのクラブとしっかり考えたうえで最後決断しろ』っていうのは自分から言ったので、それでアルビを選んでくれたっていうのは本当にありがたかったです。これを正解にできるように彼自身も頑張んなきゃいけないなっていうのは思ってますし、自分もやれるサポートがあったら引き続きやっていきたいです」
新潟への加入が決まるなかで、稲村がサッカーにおいての壁に直面したこともあった。稲村隼翔:「アルビに加入が決まってから2023年の年は大学の方でプレーしていたんですけど、自分の中で伸び悩んでいた時期があって、そのときに裕紀さんに連絡させてもらいました。そのときに裕紀さんは『自分の成長にフォーカスしろ』みたいなことを言ってくださって、それは自分の中ではすごく成長するきっかけになったというか。『プロ内定選手としていいプレーしなきゃ』とかっていうプレッシャーはあったので、それが自分の気持ちのなかで先行してしまっていたんですけど。」プレッシャーを感じる中で、稲村を救ったのが、秋山のアドバイスだった。稲村隼翔:「それよりも成長志向であることの大切さみたいなことは裕紀さんに教えてもらいました。性格的にもサッカーに対する思いっていうのはちょっと似ているのかなって思ったりするので、そういった面でも裕紀さんの言葉は大事にしています」秋山裕紀:「サッカーが本当に彼は大好きだと思うので、誰からもサッカーを勉強しようとかそういうところはたぶん似ているなて思います。プロ内定っていう立場になって自分も高校のときそうだったんですけど、他の人からの見られる目線を正直気にするのは人間の特性っていうかあるので、そのなかでいいプレーをしようというところを先行するよりは、もちろん大学で活躍するっていうことは大事だけど、アルビに来てピッチに立っている自分を想像して、大学の中でどれだけ意識できるかっていうところにフォーカスしたほうがいいんじゃないかなっていうふうには個人的には思いました。それが結局自分にもプラスになるしチームにとってもプラスにはなると思うので、それは忠実にやってくれたのかなとは思っています」この成長志向が、今季並行して2つのチームでプレーすることとなった稲村を支えることとなった。稲村隼翔:「アルビに合流してすぐ試合みたいなこともあったりしたので、また大学のほう戻ってってなると、カテゴリーの差はどうしてもあるのでそこでの難しさは感じましたけど、どこでやっても成長するってことは忘れずにできていたのでよかったのかなと思います。一緒のサッカーなので、勝つためどういう行動をするかっていうのは常に考えながらできていました」
そんな稲村がアルビのユニホームを着て初めて公式戦に出場したのは、いわきFCと対戦したルヴァン杯の2回戦だった。稲村隼翔:「デビュー戦で千葉さんと一緒に出られたっていうのはすごくうれしかったですね。やっぱりプレーのお手本として見ていた選手だったので、17歳っていう年の差もありながら一緒にでられたことにうれしさ感じますし、デビュー戦っていうのは勝ったこともうれしかったかなって思います」秋山裕紀:「自分はベンチだったんですけど、稲村はどう思ったかわかりませんけど、オレはもうそんなに心配はしてなかったですね。彼だったらできると思っていましたし、なんなら自分から攻撃を作る感じだろうと思っていたので。プレーが止まったときに、稲村を呼んでちょっと声をかけたた、それをやっぱり言ったとおりに実践してくれて頼もしい存在だなと思って見てましたし、こういうところからどんどんいろんなものを吸収して、新潟のセンターバックを背負ってくれっていうふうには見ていて思ったので、非常によかったかなとは思います」新潟の未来を背負う稲村にこれから求めることを尋ねると。秋山裕紀:「これ以上はないですね。特にルヴァン杯なんて正直稲村がいなかったらあそこまで上がれてなかったとは思ってます、本当に大事なところで出てくれたなって思ったので。もちろん大学とのやりとりもあって、なかなか自身も思うような感じの行動がおそらくできなかったとは思いますけど、そのなかでも大学の疲れを一切見せずにこっちに来たときには新潟のために戦ってくれましたし、大学に戻ったら戻ったで中心でやっているなっていうのは自分もSNSを通じて見ていたりはしていたので、非常に彼にとったらすごく大きな1シーズンだったんじゃないかなと思っています」当の稲村も、1シーズンを通しての成長を実感しているという。稲村隼翔:「いっぱい試合に出させてもらって成長は感じていて、今いる選手たちもそうですし、スタッフに感謝したいなと思っています。一番成長したのは、メンタルのところかなと思っています。やっぱりサッカーはメンタルがすごく大事なスポーツだと思うので、サッカーに対しての向き合い方や試合に対しての準備の仕方みたいなところは今季こっちに来る回数が多かったのですごく成長できたかなって感じています」
その一方で、継続的に試合に出続けていたからこそ気づいた秋山のすごさもあった。稲村隼翔:「1年間試合に出続けて高いパフォーマンスをずっと出せるっていうのが裕紀さんのすごいところだと思いますし、キャプテンマークを巻きながら試合に出続けていろんな重圧を感じながらもパフォーマンスを出し続けているっていうところに僕は裕紀さんのすごさが詰まってるかなと思います」また、秋山は高卒でアルビに入団し、今季でプロ6年目を迎えたが、アルビからオファーがあったときの気持ちを鮮明に覚えているという。秋山裕紀:「自分はもちろんプロに行きたいって思いは強かったんですけど、プロからの声が中々なくて。気にしてくれているクラブはありましたけど正式な声かけがなくて、ほぼ大学に行こうかなって思っていたところで、いくつかのクラブから話をいただきました。そのときは迷わず、大学4年間行ってプロになれるっていう保証はなかったので、いま話があるんだったら、自分の中でチャレンジしたいっていうのでアルビレックス新潟を決めたので、話をもらったときはすごくうれしかったです。それと同時に覚悟とか周りから見られる目線っていうのもやっぱり変わってきたので、よりいっそう自分のなかで覚悟とか責任っていうのは芽生えましたね」当時芽生えた覚悟は変わらず、秋山は現状に満足することなくさらに高いところを目指していく。秋山裕紀:「常にもっと頑張らなきゃっていう思いはどの立場であろうと思っていますし、上には上がいますし。日本代表を見れば、もっともっとうまい選手もいるし強い選手もいるし速い選手もいるので、そういう選手よりも努力をしないと上にはいけないと思っています。その努力をどれだけ続けられるかっていうところが選手としての価値に変わってくるかなとは思っているので、そこは続けていきたい」

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