発がん性などが指摘される有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)について、環境省は定期的な水質検査と基準値を超えた場合の改善を法律で義務付けることを決めた。
県内では米軍基地周辺の地下水や河川などから高濃度のPFASが検出されており、県民の不安は今も続いている。そんな中で、国がやっと重い腰を上げた格好だ。
現在、国は暫定目標値を代表物質のPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の合計で1リットル当たり50ナノグラムとしている。同じ値を水道法上の「水質基準」に引き上げる。3カ月に1回の検査を基本として義務付け、2026年4月の施行を目指すという。
これまでは暫定目標値を超えた場合でも水質改善は「努力義務」にとどまった。今回、明確な数値が水質基準として法律に位置付けられ、管理態勢が整備されたことの意義は小さくない。
しかし米国では、飲み水について1リットル当たりのPFOAとPFOSそれぞれ4ナノグラムを基準とするなど、厳しく定められている。ドイツも28年には2物質を含む4種類のPFAS合計で同20ナノグラムを基準とする方針だ。
日本の基準は海外と比べれば緩い。1リットル当たり50ナノグラムが本当に妥当な数値なのか。さらに多くの知見や根拠を集め、積み上げていく必要がある。
広がる不安を払拭し安全に暮らせるよう、改善に向けた議論を進めなければならない。
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義務化される水質検査とPFAS汚染の改善を行うのは、水道事業者である各自治体だ。仮に高濃度で検出された場合、改善には多額の費用が必要となる。数が多いほど金額も跳ね上がる。
基地周辺のPFAS汚染が明らかになって以降、県は水質浄化設備の設置や維持管理などに膨大な費用を費やしている。10年間で約80億円以上が必要になるとも見込んでいる。
今回、環境省が実施した調査では、上水や簡易水道を管理する3755事業者のうち約4割が、費用負担などを理由に検査を実施していなかった。
負担が足かせとなり、検査が不十分なものに終われば本末転倒だ。生きるために不可欠な水の安全確保を自治体に丸投げにせず、費用負担も含め国の責任としてきちんと取り組むべきである。
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県内では米軍基地に近い本島中部の河川や地下水から高濃度の値が検出されたことで、水源としての利用に不安があるとして取水制限や停止を余儀なくされている。
普天間飛行場周辺の湧水などから高濃度の値が出たことに対し、県は基地由来の「蓋然(がいぜん)性が高い」と判断した。それでも基地への立ち入り調査がほとんど実現しない背景には、日米地位協定の壁がある。
石破茂首相は改定について、たびたび言及している。汚染原因を特定し根本的な対策を図るには、協定の改定が必要だ。