[リポート’24 沖縄市発]
沖縄市泡瀬の沖合を埋め立てて人工島「潮乃森(しおのもり)」を造る工事が遅れている。国の交付金減額などのため、国と県が担う埋め立て工事は当初の2025年度から4年遅れる見通し。完了のめどが立たず、埋め立て後に開発を担う沖縄市はやきもきしている。(中部報道部・比嘉大熙)
潮乃森は、1987年策定の「東部海浜地区埋立構想」としてスタートした。ホテルやレク施設、マリーナを有する国際交流リゾート拠点を整備する構想だった。
2002年に着工したが、自然保護を求める地元住民らが県と市に公金支出差し止めを求めた住民訴訟で工事は一時中止に。埋め立て面積を半減した新計画を策定し、11年に再開した。
必要予算の7%
埋め立て工事の遅れは、交付金の減額が主な要因。埋め立ての一部を担う県は、工事の財源を沖縄振興公共投資交付金(ハード交付金)でまかなうが、近年は国から県へのハード交付金が減額傾向にある。埋め立て工事には単年度約20億円が必要だが、23年度の交付金は7%の1億4352万円となっている。
ハード交付金の配分は県庁内での調整となるが、県に入るハード交付金の総額が減っており、事業推進には全体額の引き上げが課題となる。
また環境保全のため、絶滅危惧1A類に指定されているトカゲハゼの繁殖時期に当たる4~7月は工事できないことも影響した。
薄れていく関心
計画では、国と県が95ヘクタールを埋め立て、そのうちの約36ヘクタールに市が企業誘致する。市は、約900メートルのビーチ沿いに宿泊施設を建設する他、医療施設や多目的広場、複合商業施設の建設を目指す。
企業誘致に奔走しているが、埋め立てが完了していないことが影響し、企業側の反応は鈍い。
市の担当者は「埋め立て完了のめどが分からなければ企業も計画が立てられない。工事が長引くと企業の関心が薄れていく可能性がある」と危惧する。
催しや要請継続
市は、潮乃森に関心を持ってもらい、事業推進の機運を高めようと市民向け催し開催にも取り組む。
毎年夏には人工ビーチの一部を開放し「潮乃森ビーチフェスタ」を開催。今夏は計8日間にわたり、海上アスレチックなどマリンアクティビティや日替わりのワークショップ、音楽イベントなどを行った。
今年は初めて津波避難訓練を実施。市東部地域の11自治会が参加し、災害に備えた避難行動の役割や課題を確認した。
国や県への要請も続ける。市は東部海浜開発推進協議会(宮里敏行会長)と共に毎年、国や県を訪問し、事業の早期実現へ向けた予算確保を求めている。推進協議会の宮里会長は「国や県に毎年要請しているが動きが遅い。しっかり予算を付けてほしい」と要望した。沖縄市泡瀬の人工島「潮乃森」、埋め立て完了のめど立たず リゾ…の画像はこちら >>
潮乃森のパース図(沖縄市提供)