福岡県糸田町の社会福祉法人「貴寿(きじゅ)会」の理事を変更する見返りに9400万円を受け取ったなどとして、県警は14日、同会理事長、今宮一成容疑者(57)=同県香春町=を社会福祉法違反(収賄)容疑で逮捕した。共謀して現金を渡したとして、前理事長で団体役員、藤井諭容疑者(61)=東京都品川区=ら3人も同法違反(贈賄)容疑で逮捕した。県警によると、2016年の同法改正で贈収賄の規定が設けられて以来、逮捕は全国2例目。
他に同法違反(贈賄)容疑で逮捕されたのは、横浜市緑区、団体役員、田中勇(45)と岡山市北区、会社役員、村社勝(74)の両容疑者。
逮捕容疑は、今宮容疑者は21年6月ごろ、福岡県田川市の飲食店などで、藤井容疑者らから貴寿会の事業譲渡に伴い「理事などを私が指定した人物に変更できるよう権限を行使してほしい」などと依頼を受け、その見返りに2億円を受け取ることを約束。同年6月下旬~7月下旬ごろ、同じ飲食店で2回に分け、計9400万円を受け取ったとしている。県警は容疑者の認否を明らかにしていない。
今宮容疑者は藤井容疑者から事業を譲渡するよう持ちかけられていたとみられる。今宮容疑者は依頼を受けた直後の21年6月下旬、約束通り、藤井容疑者を後任の理事長に就任させた。田中、村社両容疑者も理事に就いたという。
貴寿会は00年に設立。糸田町で老人ホーム(定員50人)を運営し、老人デイサービス事業も手掛けている。
理事長は23年春に、藤井容疑者から再び今宮容疑者に代わった。関係者によると、藤井容疑者が理事長に就いた後、使途不明金が発覚し、所在不明となったという。県介護保険課によると、県にも23年6月に同会から「使途不明金がある」と相談があり、7月から特別監査を実施している。