オーシャン東九フェリーは、東京~徳島~北九州間を2泊3日、32時間かけて運航する長距離航路です。今回は徳島から東京まで乗船しましたが、悪天候ゆえのツケが下船後に回ってきました。
オーシャン東九フェリーは、東京港から徳島港を経由し北九州市の新門司港まで、約32時間(2泊3日)かけて運行します。長距離フェリーとしては日本2番目の長さで、運航距離は1151km。東京港に発着する唯一の旅客フェリーでもあります。
唯一の東京発着 1000km超「長距離フェリー」とは 悪天候…の画像はこちら >>東京港~新門司港間を結ぶオーシャン東九フェリーの「フェリーりつりん」(2024年11月、安藤昌季撮影)。
その始まりは1976(昭和51)年に開設された、東京~徳島~小倉(日明埠頭)航路でした。1995(平成7)年より、九州側が小倉から新門司港フェリーターミナルへと移転。その後2016(平成28)年に、四国4県をモチーフとしたシンプルフェリー「フェリーびざん」「フェリーしまんと」「フェリーどうご」「フェリーりつりん」が就航し、現在に至ります。
シンプルフェリーと名付けられている通り、実用性を重視した船舶です。どんな航路なのか、2024年11月に徳島港から東京港までの「フェリーりつりん」に乗船しました。
JR徳島駅と徳島港のあいだに連絡バスが運行されています。オーシャン東九フェリーによると、下船客に対しては「船が遅延した場合でも、夜間にならない限りバスが待機する」そうです。
徳島港から乗船する場合は、「船が遅延した場合に直行バスはありませんが、徳島沖洲乗り場まで徒歩5分程度の、沖洲オリンピア行きの路線バスに乗ればよい」とのこと。新門司港からは乗合タクシーがあるため、遅延時でも問題ないそうですが、「事前予約者がゼロの場合のみ、門司駅構内の待合所に送迎が来ない」とのことでした。
乗船当日は火曜日。徳島駅前10時20分発の連絡バスに、港まで乗ったのは5人だけ。当日は天候が悪く、ターミナル内では「東京着は1時間程度遅延」と告知されました。
「フェリーりつりん」はすでに入港していました。1万2641総トン、全長191m、全幅27m、航海速力22.4ノット(41.5km/h)で、旅客定員252人、トラック188台、乗用車80台の搭載能力を持っています。
船名の「りつりん」は、高松の「栗林公園」から取られたもので、船には香川県の県花・県木であるオリーブ色の帯が引かれていました。
徒歩乗船客は9人。出航は11時20分です。乗船時にチケットが回収され、個室利用客には鍵が渡されました。
乗り込んだのはオーシャンプラザと呼ばれる船内中央部。冷凍食品コーナーや、飲み物、おつまみなどの自動販売機が並びます。ゲームコーナーやキッズルーム、売店を兼ねた案内所、記念撮影スペースもありました。
予約したのは2人個室です。折りたたまれた2段寝台と、テレビ、座布団、寝具、テーブル、冷蔵庫、コンセントが備わりますが、浴衣はありません。寝台幅は80cmとゆったり。テレビはBS放送で、「航海時の注意」などのチャンネルはありません。現在位置はオーシャンプラザのモニターで確かめられます。
ちなみに個室は2人用のほか4人用があり、2人用にはバリアフリー対応ルームと、ペットと乗れる「withペットルーム」も用意されています。
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船首からの景色が楽しめるフォワードロビー(2024年11月、安藤昌季撮影)。
部屋が船首付近にあるため、船首からの景色が楽しめるフォワードロビーが近いのですが、喫煙ルームが個室と近く、その点は失敗したと感じました。予約時に個室の場所が選べるので、トイレとリラクゼーションスペースに近い場所を予約した方がよかったわけです。個室の大きな側窓を覗くと、2018(平成30)年就役の曳船「第十五勝南丸」が「りつりん」と接しているのが見えました。
荷物を置き展望浴場へ。浴場の前はモニターと安楽椅子の備わるリラクゼーションスペースです。コインランドリーやパウダールーム、自販機もあり、歯磨きやシャンプー、タオルなどのアメニティも販売されています。なお、浴場内にリンスインシャンプーとボディーソープが備わり、シャンプー類の持参は不要です。
展望浴室は、個別シャワールームと銭湯のようなバスルームに分かれ、冷水器や洗面台もあります。ただしタオルはなく、持参する必要があります。
12時20分、徳島港を出港。展望デッキに上がろうとするも悪天候で閉鎖されていたので船内を探索し、オーシャンプラザで昼食の冷凍食品を購入しました。クルーのオススメは「汁なし担々麺」と「洋麺屋ピエトロ 絶望スパゲティ」とのこと。アイスやおつまみ、お菓子、うどん、そば、巻き寿司、おにぎり、カレー、あんかけ焼きそば、シュウマイ、肉まんなど、多種多様なメニューがあります。冷水、緑茶、ほうじ茶も自由に飲めます。
出航後、揺れが大きくなりました。フィンスタビライザーによって横揺れはある程度抑制されているのですが、さすがは太平洋、まっすぐ歩けないほどの揺れです。通路から見えた二等船室は、個別にカーテンで区切れ、プライバシーは保てる安価な寝台ですが、景色は見られません。もっとも当日は大雨で、フォワードロビーでも前は見えませんでした。
自室に戻ると、船首に近いため大波が当たるたびに「ドーン」と鳴ります。
気分転換のため、リラクゼーションスペースの座席に座ると、外からの衝撃音はせず、揺れもかなり少なめでした。船も鉄道と同じで、船体の中心線に近く、かつ船首と船尾の中央に近い方が乗り心地はよいのです。船酔いが怖い人は、船の中心線に近く、寝台の向きも船首方向の二等船室をお勧めします。
ひと眠りしているあいだに紀伊半島沖まで来ていました。ここではインターネットが使えます。夜食にスパイシーハンバーグカレーとカップ麺。カップ麺は荒天時にはお湯がこぼれそうなので注意が必要です。
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東京港フェリーターミナルの連絡バス。船が定時運航なら乗れたのだが…(2024年9月、安藤昌季撮影)。
翌日、東京湾に近づくと荒天も収まっていました。午前5時に放送があり、東京港到着は7時5分ごろと案内されました。所定だと5時30分(土日は6時)なので、普段は真っ暗で見られないレインボーブリッジを楽しめました。
7時3分に東京港着。徒歩下船は50人(女性16人)でした。
下船後、東京港フェリーターミナルのバス乗り場へ向かいましたが、船が遅延していたため、連絡バスはすでに出発していました。このバスは専用便というわけではなく、ジェイアールバス関東が東京駅とのあいだで運行する路線バスなのです。
「JR路線バスは時刻通りに運転するので、遅延には対応していません。以前は7~8時台の便もありましたが、運転手不足で休止しており、復活を働きかけています」(オーシャン東九フェリー)。
仕方なく最寄りの駅まで歩きました。筆者の足だとゆりかもめの東京ビッグサイト駅です。所要時間は23分。なお、りんかい線の国際展示場駅までは29分でした。