<パイプオルガン再設置決定> CF活用し費用を捻出 ネットの力、全国から支援 習志野 【年末回顧2024】

音楽の街・習志野市の象徴になってきた習志野文化ホールのパイプオルガン。建て替え後の文化ホールに再設置する費用を捻出するため、市はクラウドファンディング(CF)を実施。結果は目標額を2600万円以上も上回る約8600万円の支援金が集まり、再設置が決まった。支援は全国38都道府県から寄せられ、インターネットの拡散力や訴求力を見せつけた。
習志野文化ホールのパイプオルガンはドイツ製で、3512本のパイプを備える。1978年の開館時に約1億円をかけて、公共ホールでは国内で初めて設置された。現在も県内公共ホールで唯一の存在だが、老朽化で文化ホールが入る複合商業施設が建て替えられることになり、パイプオルガンの移設の是非が市政の課題に浮上した。
宮本泰介市長は8月、パイプオルガン再設置の費用を捻出するCFを10月に行うと発表。新しい文化ホールの建設に100億円を大きく超える市費が必要とした上で、さらに市費を投入してパイプオルガンを再設置するか市民や関係者の間でも意見が割れていることを理由に挙げ「私も迷っている。CFで可否を問いたい」と説明した。
市は目標額に達しなければ支援金を全額返還する方式を採用。つまり再設置を断念するとした。このやり方を市議会が疑問視。パイプオルガンは市の象徴で市民の財産とし、集まった支援金を受け取れる方式に変更して不足分は市費で補い再設置するよう求める意見書を賛成多数で可決した。
しかし、市は10月、方式を変更せずに実施。約1億5千万円と試算していた再設置費用は約9千万円で可能なことが分かり、事前の寄付金なども勘案して6千万円を目標額に設定した。
10月末が期限だったCFは27日午後8時5分に目標額に到達。最終的には8698万3千円が集まった。約55%は市内からだが、北海道や沖縄県からも支援が集まり、10代以下から70代までと幅広い年代が関心を寄せていた。この結果、再設置が決定し、市政の課題は解決。超過分の支援金はパイプオルガンの維持管理などに充てられるという。
宮本市長は「目標額未達なら再設置せずという方式が明確なメッセージになった」と成功の要因を分析。CFサイトで注目のCFとされ続け、市や再設置希望者がSNSで繰り返し発信したことで「複層的な効果があった。ドイツ大使館もX(旧ツイッター)でつぶやくなどネットで関心が広がった」と振り返った。ネットの力を実感させたが、行政課題の解決手法としてCFが適切なのか、また、どこまでCFに委ねるべきか、難しい問題は残っている。
(船橋・習志野支局 藤田泰彰)

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