新潟市中心部の新潟駅から古町を結ぶ“にいがた2km”エリアでビルの建て替えが進む中、11月、新潟駅前に地上10階建ての新たなオフィスビルが完成した。新潟市による企業誘致も進んでいて、地域の活性化につながることが期待される。
新潟駅万代口から徒歩2分、新潟市中央区の東大通に新たに完成したのは、天然ガスの開発などを行う企業のオフィスビル・INPEX新潟ビルディングだ。60年以上にわたって市民に愛されてきた新潟帝石ビルが建て替えられ、2024年11月に竣工した。INPEXビジネスサービスの中村寛社長は「新潟帝石ビルもそうだったが、新潟駅前のランドマークタワーとして、それにふさわしいものということで我々は自負しているところ」と話す。
地上10階建てのオフィスビルのコンセプトは「働きやすいオフィス」「環境に優しい省エネオフィス」「災害対策での安心オフィス」の3つだ。【働きやすいオフィス】遮音性・断熱性に優れたオフィス区画は、テナントの要望に応じて柔軟性を持って対応できるほか、各階共用にリフレッシュコーナー・2階にはガラス張りのラウンジが設けられている。【環境に優しい省エネオフィス】屋上やオフィスのガラス面に太陽光による発電設備があることに加え、ガスと電気をAIで効率よく運転するハイブリット空調を採用している。【災害対策での安心オフィス】免震構造を採用し、大規模な地震にも耐えられる上、軽油により72時間電力の共有が可能な非常用発電機を用意している。
2階から10階まで、最大88区画のオフィスが入居可能で、1フロア最大約326坪。INPEXの関連会社やIT企業を中心に多くの区画の貸し出しが決まっている。テナントの入居は12月に始まり、年明けから本格化。2025年の春ごろに落ち着くとみられている。また、231台の駐車が可能な6階建ての駐車場も併設していて、テナント入居者を優先して月極駐車場として運用。空き具合によっては時間貸しも検討しているという。テナントの入居状況について、中村社長は「当初想定したところでの契約は見込まれているということで、かなり高い状況でスタートができると思っている」と話す。
新潟駅から古町を結ぶ新たな都心軸・にいがた2kmエリアではビルの建て替えが進んでいる。2022年4月以降、新潟市中央区の東大通沿いにはINPEX新潟ビルディングのほかにも、日生不動産新潟駅前ビル、日生不動産東大通りビルが竣工。また、新潟駅南口付近にアイコニックタワー新潟ステーション、古町の新潟三越跡地にもビルの建設計画が立ち上がっている。新潟市は、このにいがた2kmエリアでのIT企業などの誘致に力を入れていて、新たに事業所を開設する企業に対し、賃料や新規雇用を補助する「デジタル・イノベーション企業立地促進補助金」の制度を設けている。制度の整備などにより、新潟市がIT企業の誘致に成功した件数は2019年度が6件だったのに対し、20・21年度は8件、22年度が16件、そして23年度は22件と、年々増加傾向にある。市によると、新潟駅前のビルの建て替えが進んでいる状況と、地方進出を希望する企業のニーズが合致し、好調に推移しているという。
期待されるのは、ビジネス面だけではない。ビルの1階部分には最大7店舗の飲食店が入居できる区画が用意されていて、現在誘致を進めているが、一部のテナントの入居も決まっている。新たな飲食店の出店の可能性に、街行く人からは「飲み会とかランチの選択肢が増えていい」「新潟初出店のお店ができればいいなと思う」などの期待の声が聞かれた。INPEXの上田隆之社長は「駅前にふさわしいテナントに入っていただいて、駅前の発展に少しでも貢献できれば」と期待感を示した。リニューアルが進む新潟駅とともに変わっていく周辺地域の、にぎわいの創出に期待がかかる。