「燃費なんて気にするならスバルに乗るな」が一変? 「新型ハイブリッド」の実力とは やはり他と違う“目の付け所”

スバルが新たなハイブリッド技術の導入を発表。燃費の向上が見込まれています。長年、燃費競争とは距離を置いてきたスバルですが、新たな技術はその魅力をどう引き出すのでしょうか。
スバルが2024年10月17日、「ストロングハイブリッド」を搭載した「クロストレック」を12月に発売すると発表しました。ストロングハイブリッドは、一般的にはモーターだけのEV走行も可能とする、強力なモーターを搭載したハイブリッド車に使われている呼び名です。
「燃費なんて気にするならスバルに乗るな」が一変? 「新型ハイ…の画像はこちら >>クロストレックS:HEVのイメージ(画像:スバル)。
これまでスバルが発売していたハイブリッド「e-BOXER」は、10kW(13.6馬力)という比較的小さなモーターを一つだけ搭載したハイブリッドでした。それに対して新しいシステムは、88kW(119.6馬力)という強力な駆動用モーターと発電用モーターの2つを使います。まさにストロング! と呼ぶにふさわしい内容です。
この新しいシステムの採用により、新しい「クロストレック・ストロングハイブリッド(S:HEV)」は、EVでの走行領域が広がり、燃費も高められます。スバル曰く「燃費が約20%燃費向上」ということです。
現在の「クロストレックe-BOXER」の4WD(スバルは4WDをAWDと呼称するが、ここでは一般的な4WDを使う)の燃費性能が15.8km/L(WLTCモード)ですから、20%向上すると18.96km/Lとなります。
とはいえ、同じCセグメントSUVであるトヨタ「カローラクロス」の燃費は1.8Lハイブリッドの4WDで24.5km/L(WLTCモード)。2.5Lエンジンを使う「RAV4ハイブリッド」は20.6km/L。「クロストレック」がストロングハイブリッドを使って燃費が向上しても、残念ながらトヨタ車には負けてしまいます。
しかも、スバルの新しいストロングハイブリッドは、トヨタのハイブリッドシステムの技術を提供してもらって開発したもの。いわば親戚のようなシステムなのです。では、なぜ似たようなハイブリッドシステムなのに、スバル車が燃費で負けてしまうのでしょうか。
スバルのストロングハイブリッドの燃費がトヨタ車にどうしても負けてしまうのには、「プロペラシャフト」の存在があります。
トヨタの「カローラクロス」をはじめ燃費自慢のハイブリッド車4WDの多くは、後輪をモーター駆動しています。いわゆる「E-FOUR」などと呼ばれる方式です。一方、スバルは従来の「e-BOXER」もそうでしたが、新しいストロングハイブリッドでもプロペラシャフトを頑なに使用し続けています。燃費性能向上だけを考えるならば、重いプロペラシャフトを使わないモーター方式の方が有利となります。
ただし、走行性能やフィーリングなどを考えると、そういうわけにはいきません。プロペラシャフトを使った4WD技術は、スバルが長い時間をかけて磨き上げてきた、独自の技術が詰まっているのです。その技術があるからこそ、「4WDならばスバル」という名声を獲得できているのです。
実際にスバルがアメリカで行った調査を見ても、スバルの4WD技術の評価・期待が高いことがわかります。北米のスバル顧客の多くは、冬季に降雪のあるスノーベルト地域、しかもオフロードを走る割合が特に高いそうです。アラスカやニューヨークなど、ざっくりとアメリカの北側です。
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ストロングハイブリッドの構造イメージ。プロペラシャフトありきのハイブリッドシステムだ(画像:スバル)。
そうしたユーザーは、「安全機能」「4WD」「悪天候時の安定走行」「Fun to Drive」を理由にスバルを購入していると言います。「安全機能」はアイサイトや、衝突安全性能の高さが理由でしょう。そして、それ以外の「4WD」「悪天候時の安定走行」「Fun to Drive」は、すべてスバルが磨きあげてきた4WD技術が重要な存在となっています。そうしたユーザーの購入理由に「燃費」という文言はありません。
ちなみに、スバルにとって、北米は、もっとも重要なお客様です。2022年の販売実績を見れば、年間約80万台の販売のうち、北米が60万台もあるのです。
さらに驚くのは、北米のお客様が、けっしてスバル車を「燃費が悪い」と思っていないことです。
スバルの調べになりますが、北米のライバルと比較したとき、スバル車の燃費は劣っているどころか、より勝っているというのです。確かに、北米でライバルとなるフォードやGM、ジープのSUVには、驚くほど燃費に無頓着なモデルが数多く存在します。日本車同士ならいざ知らず、現地アメリカン・ブランドと比較すれば、スバル車は、れっきとした「燃費の良いクルマ」なわけです。
そこまで言うのであれば、スバルがプロペラシャフト付きの4WDを手放すわけはないでしょう。また、「凍結路などの滑りやすい路面では」というスバルらしい前提条件ですが、後輪モーター式4WDよりもプロペラシャフト4WDの方が、ブレーキ回生の効果が大きいとか。
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北米のスバルはクロストレックもこうしたオフロードのイメージを全面に押し出している(画像:スバル)。
ということで、当分の間、スバルはプロペラシャフト付きの4WDを作り続けることでしょう。その一方で、これまで使っていたマイルドハイブリッドを順次、ストロング方式に代替していくはずです。それだけでも、ユーザーは何もせずに、20%の燃費が向上することになります。まずは、燃費向上を喜びましょう。

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