[社説]国連女性差別撤廃委 米兵性暴力 世界に問う

米軍人による性暴力は、軍事基地がもたらす人権侵害だ。
県内の5団体がスイス・ジュネーブで、国連の女性差別撤廃委員会に対し、在沖米軍による女性への性暴力問題を直接訴えた。
撤廃委は、女性へのあらゆる差別を禁止した「女性差別撤廃条約」を批准する国の履行状況を監視する役割を担う。
締約国の政府と議論し審査するが、非政府組織(NGO)にもヒアリングを行う。
14日に行われたヒアリングに、女性の人権問題について活動する県内の団体や個人で組織した「Be the Change Okinawa」の親川裕子代表らが出席し、沖縄の実情を訴えた。
親川さんらは、撤廃委に事前に提出したリポートで、1945年に沖縄戦で米軍が上陸して以降、沖縄の女性たちが米兵による性暴力に苦しんできた歴史を報告した。
ヒアリングでは、過去2年間に女性と女児に対する米兵による性暴力が7件発生するなど、女性の日常生活が脅かされている現状などを伝えた。
その上で日本政府に対し、被害者の保護・救済と補償制度の確立や、加害者の「不処罰の文化」を終わらせる包括的な行動を求めた。
沖縄の女性たちが基地問題を人権問題として世界に訴えた意義は小さくない。今回の審査を契機に国際世論にも働きかけを強めたい。
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撤廃委による日本政府への対面審査では、副委員長ら2人の委員が沖縄に言及した。日米地位協定により加害者が日本の司法で裁かれないという声に触れ「どのように被害者の人権を守るのか」と日本政府をただしたのだ。
外務省の担当者は「加害者不処罰の文化の終焉(しゅうえん)を目指す」と回答し、事件事故防止の徹底を米軍に引き続き求める姿勢を示したが、質問の答えになっていない。
地位協定によって米兵にはさまざまな特権が与えられている。基地に逃げ込んだら日本の警察は容疑者を逮捕することができない。公務中の犯罪に対しては裁判権を行使することもできない。そうしたことが、米兵の「逃げ得意識」を生み、事件を誘発していると指摘される。
撤廃委は後日、最終見解を公表する。日本政府の取り組みが不十分だと判断すれば改善勧告を行う。問題解決につながる強い勧告に期待したい。
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過去には、勧告によって差別的な日本の法律が改善された例もある。
撤廃委は、婚姻可能年齢を女性16歳、男性18歳とした民法を「差別的」として懸念を表明し、改正を要請。これは、2022年施行の改正民法で、18歳成人に合わせ、男女18歳に統一された。
女性のみが対象だった再婚禁止期間も24年4月に完全に廃止された。
国際社会から取り残されないよう、意識改革と法整備が必要だ。

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