ロシアが“味方の”最新ステルス機を撃墜!? 残骸はウクライナ領内へ 破壊せざるを得なかったワケは

2024年10月初旬、ロシアの最新ステルスドローンがウクライナ領内に墜落しました。ただ、SNSなどを見ると、同機を撃墜したのはロシア戦闘機のようです。なぜ、このような顛末に至ったのか、推察します。
2024年10月5日、ウクライナ領内にロシア空軍の無人戦闘航空システム(ドローン)、S-70「オホートニク」が墜落しました。この無人機はステルス性と強力な交戦能力を兼ね備えた次世代モデルで、存在こそ知られていたものの、具体的な能力は謎に包まれていたため、ウクライナは思いがけず大きな戦利品を授かったことになるでしょう。
SNSで公開された映像を見ると、機種は不明であるものの1機が先行し、もう1機が追尾する状態で、後者が空対空ミサイルを発射し撃墜した様子が収められています。ここから、撃墜された方、すなわち先行していた機体が「オホートニク」ではないかと考えられます。
ロシアが“味方の”最新ステルス機を撃墜!? 残骸はウクライナ…の画像はこちら >>着陸したロシアのS-70「オホートニク」(画像:ロシア国防省)。
こうした状況から推測されうるシナリオは、ロシア空軍が評価試験のために「オホートニク」を実戦投入したものの何らかの理由によって制御を失い暴走状態となったため、随伴する戦闘機によって最終的に撃墜処分に至ったのではないかというものです。しかし、現時点ではこれらの情報を裏付ける証拠は確認されておらず、なぜ撃墜したのかその正確な理由や原因については不明です。
また別の映像では、地上に墜落し残骸となった状態の「オホートニク」も確認されており、ウクライナ当局によって回収されたことはほぼ間違いないとみられます。
S-70「オホートニク」は、Su-35S「フランカー」戦闘機と同じAL-41Fアフターバーナー付きエンジンを1基搭載し、亜音速飛行が可能な能力を持っているとか。また兵装に関しても多様な誘導兵器を搭載可能であるとされます。これは既存の無人戦闘航空システムとは段違いの、かなり高い性能を目指していることを意味しており、将来的にはステルス戦闘機Su-57の僚機として、AIにより自律交戦する無人戦闘機となる構想も存在するようです。
現時点では、S-70「オホートニク」は自律交戦するような能力は間違いなく有しておらず、地上のコントロールによる限定的な攻撃能力に留まっていると推測されますが、回収された残骸からはUMPB D-30SN小型滑空爆弾の部品が発見されていることから、こうした能力を部分的ながら実証しようと試みていたことが裏付けられています。
墜落したS-70「オホートニク」は今後、アメリカなど西側の調査陣が加わり徹底的に解析されることになるでしょう。その結果次第では、ロシアの最新技術が明らかになる可能性があります。
これは1999年、ユーゴスラビアに撃墜されたアメリカ空軍のF-117「ナイトホーク」ステルス攻撃機の残骸が回収された事件を思い起こさせます。なおF-117の残骸は現在ベオグラードの航空博物館において一般公開展示されているため、将来「オホートニク」も同じようになるかもしれません。
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離陸する直前のS-70「オホートニク」(画像:ロシア国防省)。
当時、F-117の撃墜は航空技術の解析と情報戦に大きな影響を与えました。今回の「オホートニク」の墜落も同様に、インパクトをもたらす可能性がありますが、逆にかつて日本で起きた函館空港へのMiG-25亡命事件のように過大評価が明らかとなり、ロシアの技術的な限界が露呈する可能性もあります。
いずれにせよS-70「オホートニク」の墜落は、ロシアにとって新鋭機が敵側に渡るという痛恨の喪失であり、ウクライナにとっては技術情報を得る貴重な機会となることは間違いないでしょう。今後の解析結果に要注目です。

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