若い頃はそういうものよ。コスパがどうこう、現実的にどうこう。賢いふりしてね。今に分かるわ。タイム・イズ・マネーなんて世まい言だって。
台湾・台中の下町で４０年間、常連客に愛され続けてきた理髪店の女店主アールイは、頼もしいようで危なっかしい子どもたちを心配しながらも、彼らの振りかざす「時代」に嫌気が差しているもよう。丁寧に親切に、多くを求めず足るを知り、同じ毎日を積み上げる彼女のそばで、無職の長男が「不労所得」などとのたまう。
ある日、アールイは店を休みにして、家族に何も告げず遠方へ出かける。ポンコツ車のアクセルを恐る恐る踏み込み見知らぬ土地へ、一人っきりの慣れないドライブ小旅行。スマホも家に置きっぱなしで、道に迷って焦ってトラブル続き。でもその旅は、アールイのこれまでの人生を肯定し、輝かせる旅になる。
（桜坂劇場・下地久美子）
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