横須賀に「第二の長距離フェリー」就航へ!? 東京九州フェリー絶好調 “地の利を活かす”一大プロジェクト始動!

「東京九州フェリ-」が新規就航して3年、横須賀港の貨物量が絶好調に推移しています。第二の西日本航路が視野に入るものの、現状では手狭なことから、新たな「埋め立て」が決まっています。
神奈川県横須賀と北九州の新門司を結ぶ「東京九州フェリー」が2021年7月に就航してから3年、市は同フェリーが発着する横須賀港の新港地区に新たな埠頭を設けることを計画しています。既存の岸壁で東京九州フェリーの使用を継続しつつ、新規岸壁で外航自動車船を受け入れるとともに、新たな内航フェリー航路を誘致する方針です。
横須賀に「第二の長距離フェリー」就航へ!? 東京九州フェリー…の画像はこちら >>東京九州フェリー「それいゆ」(深水千翔撮影)。
9月の「国際物流総合展2024」で講演した横須賀市港湾部港湾企画課ポートセールス担当の岩本英記主査は「人手不足や環境対策など、いろいろな面から新たな航路のニーズはますます高まっている。首都圏の物流ハブを目指し、積極的な航路誘致に取り組んでいきたい」と話していました。
横須賀市は2024年6月に港湾計画を改定。新港地区で約17ヘクタールの埋め立てを行い、自動車船や冷凍貨物船の接岸に対応した水深12m、延長290mの岸壁(外貨埠頭)と、内航フェリーやRORO船に対応した水深9m、延長260mの岸壁(内貨ユニットロード埠頭)を整備することを決めました。
新しい埠頭の埋め立て地は現在の新港埠頭の東側、ノジマモール横須賀とうみかぜ公園の北側で、これに合わせて分譲予定の事業用地や臨港道路、公園の整備なども行います。
横須賀港の拡張を決めた背景には、東京九州フェリーによる取扱貨物量の増加があげられます。同港の取扱貨物量は近年、1000万トン前後で推移し、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により2020年には750万トンまで落ち込んだ後、2021年から増加に転じ、2023年には約1600トンまで伸びました。岩本主査は「フェリー就航の大きな影響を受けている」と説明します。
SHKライングループが運航する東京九州フェリーは横須賀港と北九州港の新門司地区を約21時間で結ぶ長距離フェリーです。主に「はまゆう」と「それいゆ」の2隻が投入され、日曜日を除いて1日1便のデイリー運航を行っています。
下関港に発着する関釜フェリーや蘇州下関フェリーに接続することで、SHKライングループ内で日中・日韓との複合一貫輸送も可能です。
「横須賀港が東京湾の速度制限の影響が少ない湾口部に立地していることで、2隻のフェリーによるデイリー運航ができる。さらに28.3ノット(約52.4km/h)という高速性で、陸送と同等のリードタイムで九州へ3日目配送が可能となっている」(岩本主査)
東京九州フェリーが就航している新港地区に限定した場合、2021年は約100万トンだった取扱貨物量は2022年には400万トン、2023年には500万トンを突破し、600万トンに迫る勢いです。新港埠頭はフェリーだけでなく完成自動車輸出のための自動車船と、水産品輸入のための冷凍船も利用することから課題を抱えています。
というのも、貨物が混在するうえに、無人航送で使用するシャーシ置場などの背後用地が不足する状況に陥っています。横須賀市は当面の対策として、シャーシを他の地区に逃がすことや、既存の上屋を取り壊して、そのスペースを活用することを検討していますが、根本的な解決にはなりません。さらに自動車船と冷凍船は、フェリー着岸時には離岸しなければならず、自動車船に至っては水深不足による減載入港など、非効率な運用が続いています。
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新港埠頭の自動車ヤード。以前は奥のフェリーターミナル付近まで使えていたが、フェリー就航で狭まった(深水千翔撮影)。
一方で、全国的なトラックドライバーの不足やCO2(二酸化炭素)の排出削減に対応するためモーダルシフトが推し進められており、さらなるフェリー貨物の取扱い量増加が見込まれる状況です。そうしたなか、横須賀は陸路のアクセスも大きく向上します。
今後、圏央道 釜利谷JCT-藤沢IC間の開通による北関東方面へのアクセス改善が期待できるうえ、横浜市の八景島から横須賀市北部の夏島まで国道357号(東京湾岸道路)の延伸が実現すると、横須賀市と首都高方面とのアクセス向上が見込めることから、横須賀港への新たなフェリー・RORO航路の開設を望む声もあります。
しかし、現状ではこうしたニーズに対応しきれず、新たな航路を開設することもできません。横須賀港の抜本的なキャパシティを拡大するため、新港地区を埋め立てることで新規埠頭を整備することが決まったのです。
同埠頭には7万総トン級の自動車専用船(全長230m、満載喫水10.9m)や、2万総トン級のフェリー(全長222m、満載喫水7.4m)を受け入れ可能な岸壁を設けることを予定しています。
「どういった航路のニーズがあるのか、どういった土地のニーズがあるのかということについて、皆さまからの声を頂戴して、今後の施策に活かしていきたいと考えている。多くの物流関係者様の役に立てるような、首都圏の物流のハブ港になれるよう積極的な航路誘致に取り組んでいきたい」(岩本主査)
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フェリーターミナル(深水千翔撮影)。
現在、時間外労働の上限規制などが自動車運転業務にも適用され、ドライバー不足に加えて物流コストが上昇することで、国内物流が停滞する「2024年問題」が懸念されています。政府は「2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足の可能性がある」と指摘。2023年10月に「物流革新緊急パッケージ」を策定し、「フェリー・RORO船などの輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増」するとした目標を掲げました。
横須賀市では横須賀―新門司航路に加えて、西日本方面への新規フェリー航路の開設を想定して新規埠頭の整備を行うとしており、横須賀港を発着地とする新たなフェリーが見られる日がやってくる可能性は十分にあります。

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