これから金利はどうなる? 自民党総裁選の影響も受ける? 専門家が解説

住宅ローンの診断サービス「モゲチェック」を提供するMFSは24日、住宅ローン勉強会を開催。同社 取締役COOの塩澤崇氏が「日銀の金融政策決定会合について」「10月住宅ローン金利予想について」「自民党総裁選の影響について」、詳しく解説した。

○■日銀の利上げは慎重だった

まずは日銀金融政策決定会合を受けて、塩澤氏は「米国経済を不安視した慎重な判断だったと捉えています」とコメント。そして、政策金利については「25年末か26年頭に1%までいく程度ではないでしょうか」との見方を示す。「金利差が縮小することによる円高で、輸入物価は下落、企業収益が圧迫されて賃上余力が低下します。一方で、米国経済も盤石とは言えない。日銀の利上げが慎重になった理由には、この為替、米国経済という2つの懸念点が挙げられます」。

「日銀の考えとしては、急激な円安も困るが円高も避けたい。ゆえに米国経済・米国金利に従属的な金融政策とならざるを得ません。日本の中立金利は米国経済・金利も踏まえた金利水準になるので、日本の経済状態だけで決め切れない、という背景があると考えています」と塩澤氏。

これを踏まえたうえで、あくまで個人の見立てとして「政策金利の見通しですが2025年末~26年始に1.0%になるかどうか」と予想した。今後は、賃金上昇がサービス価格の上昇につながったか、春闘を受けて会社の賃金上昇が織り込まれたか、というところに注目していくと説明している。

では変動金利と固定金利のどちらが有利になるのだろうか。「これも個人的な見立てですが、まだ変動が有利、というフェーズは続くんじゃないかと思います。その理由としては、まだまだ固定と変動の金利差が大きい。9月現在で1.4%を超えるポイント差があります」。

「好景気のときは高金利になりますし、不景気の時は低金利になります。景気サイクルっていうのは周期的にやってきますので、仮に私の見立てが外れて金利が上がったとしても、ずっと金利が高止まるということは考えづらい。そのうち下がることも踏まえると、まだまだ変動が良いと考えている次第です」

そのうえで金利上昇に対しては、借り換えなどで支出を削減する、長期分散積立投資でインフレを味方につける(価値が目減りする現金保有はリスクになる)、繰り上げ返済する(住宅ローン金利>資産運用の利回りになった場合のみ)といった対策を挙げる。
○■10月の住宅ローン金利は?

続いて、10月の住宅ローン金利の予想について。結論から言うと「おそらく金利は上がるはず」と塩澤氏。「なぜかと言いますと、日銀は7月に0.1%から0.25%に利上げしました。その0.15%分だけ、変動金利は上がる見通しです。ですので、いま金利は0.3~0.4%という非常に低い水準ですが、そこから0.15を上乗せした0.5%前後の変動金利の戦い方になるはずです」。

これを受けて、我々の毎月の返済額はどのくらい増えるのだろうか。「元本3,500万円・35年返済を前提にすると2,300円程度といったところです。そんなに増えるわけではないんですが、その程度のインパクトになるかなと思っています」。

ここで塩澤氏は「この通りのランキングになるとは私自身も思ってはいませんが」と断ったうえで、住宅ローンの金利をシミュレーションした結果を公開。注意点として「ソニー銀行さんは今回、基準金利を上げない、と発表しました。こうした動きを捉えて、基準金利を上げる時期を遅らせる銀行が出てくる可能性があります。またネット銀行のPayPay、SBI新生、auじぶんは、メガバンクよりも上のランキングを狙うために引き下げ幅を拡大するかも知れません。

10月に変動金利が上がることを受けて、固定金利どうなるのか。これについては「25年にかけて下がる可能性もあるかな、というふうに考えています。理由は、アメリカの利下げによって長期金利が下落します。基本的に、住宅ローンの固定金利って長期金利と連動するんです。この長期金利は、どうやって形成されるのか。色いろとメカニズムがあるんですが、現在はアメリカの利下げにイチバン大きな影響を受けている状況です。グローバル全体で金利上昇圧力が弱まる可能性がありますので、これを踏まえると長期金利が下がる可能性が考えられます」。変動金利が上がり、固定金利は下がる。これにより金利差が縮小傾向になるんじゃないか、と塩澤氏。

これを踏まえると、金利と密接につながっている不動産価格はどうなるか。「短期金利(変動金利)の上昇は下落圧力になるんです。具体的には、金利が1%上昇すると約20%の価格下落となります。なぜか?たとえば、金利0.5%・元本3,500万円の方が毎月9.1万円を支払っているとしましょう。このとき、金利が1.5%に上昇したとします。それでも毎月の支払いは9.1万円に抑えたいと思う。そのためには住宅ローンの元本を下げないといけない。これを計算すると3,000万円になるんです」。金利が上がるほど、人は価格の低い物件しか買えなくなってくる、これが価格の下落圧力になる、と解説する。

またこれとは別に、インフレと米国利下げによる長期金利の下落圧力を背景とした「不動産価格が上昇する」メカニズムにも注意するべき、と補足する。「不動産価格=家賃収入 / 利回りという計算式が成り立ちます。今後、インフレにより家賃収入は上がります。一方で、利回りは下がっている。したがって不動産価格は上がる可能性がある。つまり一概に、短期金利が上がるから不動産価格が下落するとは言い切れない背景もあると考えています」。

○■自民党総裁選が影響!?

最後に、自民党総裁選の影響についても言及した。現在のところ有力な候補者とされている石破茂氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏。この3氏の誰かが選ばれた場合に共通することとして「高金利政策は取りづらい」とする。「いま新NISAを始めたばかり。多くの国民が貯蓄から投資という流れに乗っかっていますので、それに悪影響が出るような、日経平均株価の下落を促すような高金利政策は取りづらいのでは」。

そして石破氏が選ばれた場合については「先週でしたか『変動金利上昇に対する緊急対策を取る』という発言がありました。住宅ローン減税に戻す動きが出る可能性があります」と塩澤氏。一方で高市氏になった場合は「利上げのスピードが、予想していた以上にゆっくりになる可能性があります。アベノミクスを継承して低金利政策を続ける、日銀に圧力をかける、ということが考えられます」。

小泉氏が選ばれた場合は「解雇規制の緩和が賃上げに作用しそうです。民間企業としては社員を解雇できない、そこで賃金を低く据え置いてきた。解雇規制が緩和されると、良い人材の賃金を高くして、一部の社員は解雇する。賃金上昇、消費拡大、インフレのサイクルが回り始めるので、住宅ローン金利の上昇につながる可能性があるかなと思います」と解説した。

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