共働きの子育て夫婦視点から考える「働き方のジェンダーギャップ解消」とは?

Indeed Japanは18日、共働きの子育て夫婦の視点から考える「働き方・キャリアのジェンダーギャップ解消に向けた有識者会議」を都内で開催した。同社の調査によれば、男女間にはいまだ「育児分担に偏り」があり、また「仕事の調整に格差」があることも分かっている。その解決策は、あるのだろうか?

■子どもを産んだ後も働きたい

毎年9月19日は「育休を考える日」に定められている。これに合わせ、性別に関係なく1人ひとりが希望する働き方やキャリアを選べる未来の実現に向けた取り組みを進めているIndeed Japanでは、あえて”共働きの子育て夫婦”から考える「働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップ」をテーマに有識者会議を開催した。

冒頭、Indeed Japan代表取締役の大八木紘之氏は「(世界経済フォーラムが発表している)ジェンダーギャップ指数2024において、日本は146カ国中の118位でした。まだまだ下位です。当社では、雇用という観点からジェンダーエクイティの実現に取り組んでいます」と挨拶する。

仕事と育児の両立支援が拡充され、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方が浸透してきたように感じられる現代の日本社会。しかし同社の調査によれば、いまだ育児負担は女性側に偏っており、キャリアの断絶や理想的な働き方を諦めざるを得ない状況が続いている。

ここで同社が2024年8月に実施した最新の調査結果が報告された。それによると、第一子の出産や育児をきっかけに、仕事や働き方を変えた女性は約3人に2人に上ったほか、仕事を辞めた(辞める予定)と答えた女性は13.7%という結果に。また、仕事や働き方を変えたことに不満な女性は34.7%だった。

■夫婦で取り組めることは?

こうした現状を受けて有識者会議では、共働きの子育て夫婦の働き方・キャリアにおけるジェンダーギャップ解消の糸口を探っていった。まず、夫婦間で取り組めることはあるだろうか?

これについて日本ギャップ解決研究所所長/NPO法人ファザーリング・ジャパン副代表の塚越学氏は「実はそもそも多くの共働き・子育中の夫婦が、今後の働き方・キャリアについて話し合えていない、という現実があります」と指摘する。それはなぜだろう?

「そこには情報格差があるからです。子どもを産んで育ててきた母親と、何となく子育ての手伝いをしてきた父親では、話し合いになりません。だから、まずは夫婦間で同じ情報量になるよう、父親に子育てに関する情報をインプットすることが先決。夫婦の分担について、日常のどんな時間を使ってどんな育児をしているのか、現在の生活のどんな部分にモヤモヤを感じているのか、などなど―――。その上で子育てをしながら、自分のキャリア、パートナーのキャリアを今後どうしていきたいのか、考える時間を持ってください」とした。

続けて”考える時間の確保”について、塚越氏は「実際、どんなときに夫婦で話し合う時間を持てると思いますか? おそらく、たくさんの人が『子どもが寝た後』と答えます。でも子どもが小さいうちは『子どもが寝た後』なんて、永遠に訪れません。子どもを預けるなどして、カフェやラウンジでしっかり話し合ってください」と説明。

一方、教育経済学者/慶應義塾大学総合政策学部教授の中室牧子氏は「子どもに投資する、と言ったとき多くの人は『お金』の話だと思いがちです。でも『時間の投資』も非常に大事なことなんです」と切り出す。

「子どもに読み聞かせをする、家事を手伝ってもらう、食事のときお風呂のときにいろいろなお話をする――。これらは子どもに対する時間投資で、子どもの成長にとって非常に大事な時間です。これが有効な時期は、子どもが幼いときに限ります。子どもの年齢が上がっていくにつれ、子どもに対する時間投資は効果が減り、その量も減っていきます。ところが日本の労働市場は、若い人の労働時間が長い。子どもが生まれたばかりの若い夫婦にこそ、子どもに時間投資できる、ちゃんとした育休を与えないといけません」

続けて、「ちなみに子どもが10歳を超えてくると、時間投資の代わりにお金の投資が必要になります。したがって、その頃になったらバリバリ働ける労働環境を用意してあげたい。私は、子育てとキャリアのバランスを人生のライフタイムと絡めて設計できる社会の実現こそが大事だと思っているんです」とした。

ここでIndeed Japanの大八木紘之氏は、同社がグローバルの職場環境下にあることを引き合いに出した上で「外国にいる相手とコミュニケーションがうまくいかないときがあります。それは、同じ情報を共有していないときです。同じミッションを掲げており、同じ情報を共有できているなら、おのずと解決策はそろうものです。それは夫婦間でも同じじゃないでしょうか」とした。

「大事なことはHonesty(誠実であれ)ってことだと思うんです。例えば、来週は忙しいので計画通りに進まないかもしれない。そんなことを、あらかじめ正直に伝えておく。すると夫婦間のコミュニケーションも、スムーズに進みます」
■企業が取り組むべきことは?

では、企業はどんなことに取り組むべきだろうか? 中室氏は「やっぱり労働市場の改革が大事です」と話す。

「今後、規制改革会議で取り上げたいと思っているんですが、有給を時間単位で取得できるようにしたい。子どもを送るため1時間だけ遅れる、薬を受け取りに行くので1時間だけ中抜けしたい、そんなケースが結構あります。今は上限が決まっていますが、この上限を緩和したい。自分の意思で働き方を変えていく場面がもっと作れれば、ジェンダーエクイティの実現にも近づくのではないでしょうか」

塚越氏は「今、育休取得率の向上に躍起になっている企業さんも増えてきました。ただ、数日だけ休みを与えて育休率を100%に上げて、あとは今まで通りみたいな企業も多い。それでは、意味ないとまで言わないまでも効果は薄い。国の目的は、男性が育休を取ることによって社会全体の構造意識を変えることにあり、また職場での業務の見直しにつなげる意図もあります。そこまで見通した上での育休取得率の向上じゃないと、その先の賃金格差の是正、女性の活躍できる社会の実現までたどり着けないと考えています」

1時間の有識者会議は、ここで終了の時刻となった。最後にIndeed Japanでは「今後も、皆さんと一緒に社会課題を共有しながら、明日からできることを少しでも考えていけたらと思っています」と締めくくった。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

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