「核シェルター全国に6万か所以上」の国 その内部もスゴすぎる…日本も見習うべきじゃ?

スウェーデンには、それは核攻撃から国民を保護する「地下シェルター」がいろいろな場所に存在します。どのようなものなのでしょうか。
国防意識が高いことで知られるスウェーデンには、日本ではまず見られない施設が、いたる場所に設置されています。それは核攻撃から国民を保護する「地下シェルター」です。
「核シェルター全国に6万か所以上」の国 その内部もスゴすぎる…の画像はこちら >>シェルターがあることを示す「SKYDDSRUM」の標識(細谷泰正撮影)。
同国のシェルターは、第二次大戦後の米ソ冷戦時代に建設が始まりました。その数はなんと6万5000か所。これは、冷戦時代の同国の全人口にほぼ匹敵する、700万人を収容することが目的だったとされています。
これらシェルターは学校や病院などの公共施設の地下に建設されたもの、マンションやアパートなどの共同住宅の地下に造られたもの、個人の住居の地下に造られたものなど様々です。
こうしたシェルターの場所を示す標識も、同国では制定されています。それはオレンジ色の四角の中に青の三角のデザインのもので、「SKYDDSRUM」と表記されています。この標識は実際にスウェーデンの街を歩いてみると、いろいろなところで目にします。
これらのシェルターには、核攻撃による被ばくから市民を守るための構造が備えられています。
必ず二重の頑丈な扉が備え付けられていて、かつ高い気密性が確保できるよう、ドアの隙間にはシーリング材が装着されています。換気はフィルター付きのファンによって行われます。
地下シェルターと聞くと、有事の際は地下でじっとしながら攻撃が収まるのを待つための施設といったイメージを抱くかもしれません。確かに自宅の地下に造られた小規模なものは実際そのようなものであったりしますが、スウェーデンの地下シェルターのなかには、万一の際でも可能な限り日常生活を維持できるよう、そのことを目的にしたものが多数存在します。
それらはかなり大規模で、シェルターとしての役割を持ちながら、平時は劇場や自動車整備場、縫製工場など様々な用途に使われているものもあります。また、学校の地下に建設されたシェルターのなかには、教室や体育館、部活動を行う部屋まで用意されているものもあるほどです。
スウェーデンにあるシェルターのなかには、内部で射撃訓練が行えるものもあります。これらは冷戦中に造られ、その後は他の用途へと転用されている場合もありますたとえば共同住宅の地下にあるシェルターは、住民の共用倉庫として使われているものもあります。しかしこうしたものも、有事の際には2日以内に本来のシェルターとしての機能を取り戻すことになっています。
さらに、近年の国際情勢の緊迫を受けてスウェーデン政府では15年ぶりに新しいシェルターの建設再開を表明しています。
同国では軍事防衛と市民防衛が自転車の両輪のように機能して、初めて国家防衛が可能だと認識されています。そのため完備されたシェルターにより市民生活を維持することは軍備と同じレベルで重要であると認識されているわけです。
では、それと比べて日本の状況はどうでしょうか。
北朝鮮が打ち上げた飛翔体が、初めて日本の上空を通過してからかなりの年数が経ちました。これは日本に対する明らかな威嚇です。こうした動きに対し、日本政府はその後、「Jアラート(全国瞬時警報システム)」と呼ばれる緊急速報システムを整備し、いざというときはそれを鳴らして国民に避難を呼びかけるように対策を講じました。
しかし、ここで発令される内容は「できれば丈夫な建物や地下に避難してください」「窓のない部屋に移動してください」「建物がない場合は物陰に隠れてください」といったもの――。これでは万一の際、被害が減らせると本気で考えている専門家がどれだけいるのか筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)は疑問です。
日本のミサイル防衛は、洋上で探知迎撃するイージス艦と、最終的に撃ち落とすペトリオットを始めとした対空ミサイルで軍事防衛の部分は何とか整備されています。しかし、残りの民間防衛の部分は手つかずの状況ではないでしょうか。それこそ、全国各地に地下核シェルターを急いで建設するというのは、極めて有効な方法であるはずです。自宅やマンション、会社などの地下にシェルターを建設しようという個人や法人、団体を税制面で優遇するようにすれば、普及も進むのではないでしょうか。そういったことも検討すべきだと筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)は考えています。
国防先進国スウェーデンと比較すると日本政府の対策は、無責任と言わざるを得ないでしょう。

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