長かった夏休みも終わり、週明けから県内のほとんどの小中学校で1学期の後半が始まる。久しぶりに友達と会うのを楽しみにしている子も多いだろうが、今この時も「学校に行きたくない」と悩んでいる子もいるのではないか。
夏休み明けは子どもの自殺が増える傾向にある。厚労省の自殺対策白書によれば、10代の死因1位が「自殺」というのは、先進7カ国で日本だけだ。
小中高生の自殺はコロナ禍の2020年から増え、22年は514人と過去最多となった。23年も513人と高止まりを続けている。今年1~6月の自殺者数は、昨年同期比で5人増の229人となっている。
自殺の要因は「学校問題」が最も多く、「健康問題」「家庭問題」と続く。子どもが自ら死を選ぶ理由は複合的だ。学校生活や友人関係などの悩みに加え、親からの叱責(しっせき)や親子関係の不和など、さまざまなつらさや苦しみが重なっているケースもある。
特に新学期で周囲の環境ががらりと変わったり、ゴールデンウイークや夏休みなどの長期休暇が明けた直後は、精神的な動揺やプレッシャーを一層感じやすくなる。
一見すると平気なように見えても、心の中は不安やつらさでいっぱいで落ち着かないこともあるはず。周囲の大人は子どもたちのちょっとした異変にも気付けるよう、注意深く見守ることが必要だ。
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心に苦しみを抱えながら、周囲に「SOS」を発信できない子も多い。
子どもを守るため、昨年6月、こども家庭庁や厚労省、文科省、警察庁などが連携し、有識者や当事者のヒアリングも踏まえて「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定した。
自殺に至る要因分析や自殺リスクの早期発見、的確な対応などに加え、相談支援体制や予防のための対応などをまとめている。
リスク発見のツールとして子ども1人に1台割り当てられている学習端末の活用や、家庭や学校で過ごす子の様子を把握するため、保健や福祉、教育関係者らが連携していく必要性などを明記した。
電話やSNSを利用した相談体制も整備。子どもたちに身近なLINE(ライン)やチャットなどで心の悩みを打ち明ける場を提供している。支援への第一歩を気軽に踏み出せる体制整備が不可欠だ。
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関係団体やNPOなどの動きも活発だ。厚労大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」は、9月の自殺予防週間を前に、子ども本人や周囲の友人、大人に向けて啓発の動画を発信している。
オンラインで自殺予防に取り組むNPOは学習端末を利用して心身の異変などをキャッチするシステムを開発。「死にたい」などの言葉が検索されると、自動的に相談窓口などが表示される。
悩みを抱える子どもを守るため、国や自治体、地域が一丸となって効果的な方策を実行することが重要だ。