7月25日、日経平均株価が前日比1285円安の3万7869円と7日連続の下落となった。7月11日の最高値4万2427円と比べると11%の下落だ。これがバブル崩壊の入り口かどうかまだ断定できないが、そうだとすると、株価下落はまだほんの入り口だ。
1929年9月3日に386ドルだったニューヨークダウは、1932年7月8日に40・6ドルまで値下がりした。下落率は89%だ。一方、89年の大納会で3万8915円をつけた日経平均株価は、2008年10月28日に6995円に値下がりした。下落率は82%だ。
今回の株価下落の大きな原因は、急速に円高が進んだことだ。1ドル=152円と、わずか10日間で10円も進んだ円高は、まだ調整途上だ。モデル計算でも、購買力平価でも、均衡為替レートは1ドル=110円程度、つまり本来の姿に戻るまで、あと40円ほどの円高が必要になるからだ。
貯蓄から投資という政府の掛け声に乗せられて、新NISAを始めた国民からは、怨嗟(えんさ)の声が上がっている。ただ、損失はこんなものでは済まない可能性がある。株は買うよりも売る方が、はるかに難しい。特に上げ相場のときはそうだ。私は7月12日に、生前整理とガンの治療費確保のため、株主優待目的のものを除いて、すべての株式や投資信託を処分した。ただ、こうなってみると株主優待用も一緒に処分しておけばよかったかなと正直思っている。
多くの経済評論家が、日経平均は利益との比較で見れば割高とは言えないと株価再上昇を唱えているが、89年にも「Qレシオ」というバブルを正当化する指標が喧伝(けんでん)された。未来のことは誰にも分からないが、今回の株価下落による傷が浅いことは、事実だ。投資から手を引くチャンスは、まだ続いている。(経済アナリスト・森永卓郎)