「老害」。年老いることがまるで悪であるかのようなこの言葉が嫌いだ。お年寄りが口うるさいと思うことが、ないわけではない。でも今、自分たちが生きている社会は間違いなく、そのお年寄りたちが築いてきた社会を基に成り立っている。若者がゼロからつくり出したものでもないし、「老害」と口にする人たちも確実に老いる。老いは誰にも平等に訪れる。
今作は、ベストセラーとなった直木賞作家・佐藤愛子のエッセー集が原作。90歳で断筆し、日がな一日テレビを前に鬱々(うつうつ)と過ごしている佐藤の元にエッセー執筆の依頼が来る。当初は断っていたが、中年編集者の熱意に負け、再び筆を執る。つづられている言葉は、年を重ねたからこそあふれ出る優しさとエネルギーに満ちている。
佐藤は結局断筆することなく100歳の現在も筆を執り続けている。鑑賞後、年を取るのが少し楽しみになった。(DX推進部・屋良朝輝)
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