ウクライナF-16の強力なライバルか!? ロシア版「トムキャット」戦闘機の“恐ろしい性能 ”とは

ロシアとの戦いが泥沼化しつつあるウクライナで、F-16の運用がいよいよ始まりそうです。ただ、これまでロシア側で弾道ミサイルの空中発射母機としてしか使われていなかった戦闘機が、その手強いライバルになりそうです。
ロシアによるウクライナ侵攻は、熾烈な消耗戦の様相を呈しています。ロシア空軍は約1000機もの戦闘機や攻撃機を保有し、その多くを戦場に投入しています。特に、スホーイ製のSu-27「フランカー」系列であるSu-30SM、Su-34、Su-35Sといった発展型が主力になっていることが、戦場での損失数から推測されます。これらに加え、攻撃機Su-25の損害も目立ちます。
一方、かつてのソ連製戦闘機でスホーイと双璧をなしていた「ミグ(MiG)」の存在感は薄いようです。主力製品であるMiG-29「フルクラム」の撃墜記録は確認されておらず、実戦投入も限定的か、もしくはしていないと思われます。
しかし、そのような動向の「ミグファミリー」のなかで、MiG-31「フォックスハウンド」だけは静かにその姿を戦場に見せています。MiG-31は被撃墜記録こそないものの、射程約1000kmの「キンジャール」空中発射弾道ミサイルの投射母機として、主に爆撃機的な運用をしていることが明らかになっています。
ウクライナF-16の強力なライバルか!? ロシア版「トムキャ…の画像はこちら >>ロシア空軍のMiG-31BM「フォックスハウンド」。2000年代に近代化改修を受け新しいレーダーへの換装など戦闘能力の向上が図られている(関 賢太郎撮影)。
MiG-31の本来の役割は「迎撃戦闘機」であり、実はロシア空軍最高峰の空中戦能力を誇ります。ウクライナ空軍がF-16や「ミラージュ2000」などといった西側戦闘機の運用を本格化すれば、MiG-31はその真価を発揮する機会が訪れるかもしれません。
MiG-31は格闘戦こそ苦手(最大荷重5G)ですが、大出力エンジンと、それに依拠した最高速度マッハ2.8という現役最速の速度性能、さらには最大探知距離400kmを誇る早期警戒機並みの「ザスロンAM」フェイズドアレイレーダーを搭載しているため、手強い存在になることは間違いないでしょう。
ちなみに、このレーダーは複数標的同時ロックオン能力に優れるため、MiG-31はR-33S(推定射程150~200km)もしくはR-37M(推定射程200~300km)といった長射程空対空ミサイルを最大4発搭載して、同時に複数の目標を攻撃することも可能な性能を持っています。
そもそも、MiG-31は低空侵攻する爆撃機や巡航ミサイルの飽和攻撃に対抗するために開発されました。なお、その性能と開発経緯から、アメリカのF-14「トムキャット」と比較されることもあります。
F-16を主力に据えようとしているウクライナ空軍にとって、MiG-31は脅威になるのは間違いありません。F-16のレーダー探知距離や空対空ミサイルの射程はMiG-31の半分以下であり、ロシア空軍がMiG-31による積極的な防空作戦を実施すると、ウクライナ空軍は苦戦を強いられるでしょう。
R-33やR-37といった長射程の空対空ミサイルは、その大きさから運動性が低く、戦闘機相手にはあまり有効ではないと考えられるものの、相手に回避行動を強いて作戦をキャンセルさせることができます。超長距離から虎視眈々と獲物を狙うMiG-31の存在は、ウクライナ空軍にとって大きな重圧になると考えられます。
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MiG-31は全長22.67m、最大離陸重量46.2tもあり、現用戦闘機としては世界最大。戦闘機というよりも「空中ミサイル発射機」に近いだろう(関 賢太郎撮影)。
1991年の湾岸戦争において、F-14は何発かのAIM-54「フェニックス」長射程空対空ミサイルを発射しましたが、1機の戦闘機も撃墜できませんでした。これは、F-14の強さを知っているイラク空軍戦闘機パイロットが、F-14のレーダー波を逆探知すると即座に逃げたことが原因であるとも推察されます。
このことを鑑みると、MiG-31「フォックスハウンド」も同様に恐れられることになるかもしれません。今後の戦局にどのような影響を与えるのか、注視したいところです。

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