米空軍CV22オスプレイが昨年11月、鹿児島県屋久島沖で墜落し、乗っていた8人全員が死亡した事故で、米軍幹部が米連邦議会に対し「前例のない壊滅的な機械の故障が発生していた」と証言した。
クラッチの設計を見直し、その性能を検証するために運用を規制しているという。全面的な任務再開は部品交換を終える2025年半ば以降になるとの見通しを示した。
米軍が議会で正式に説明した意味は大きい。「オスプレイは安全ではない」と認める内容だ。
即座に運用を停止し、問題を解決できないのであれば撤退を決断すべきである。
米軍は事故後に停止していたオスプレイの運用を3月に再開している。県内でも普天間飛行場所属の海兵隊MV22オスプレイが飛行するようになった。
一方、飛行範囲を緊急着陸などの対応が可能な飛行場から30分以内に制限している。
安全面の懸念が払拭されないまま、「慣らし運転」を続けているのではないか。
米軍幹部の言葉は、こうした臆測が正しかったことを裏付けている。
この幹部は、22年のカリフォルニア州での事故原因を特定し、飛行が800時間を超えた機体のクラッチの交換を義務付けたものの、「リスクが完全になくなったわけではない」とも打ち明けている。
「オスプレイの安全性に問題はない」と繰り返す米軍や日本政府の説明は、何を根拠にしてきたのか。疑問は深まるばかりである。
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木原稔防衛相は米軍幹部の発言について「安全対策で米軍と緊密にやりとりしている」と強調しながら、「詳細を米側に確認している」と述べるにとどめた。
オスプレイの安全に関する極めて重要な情報である。これを知らずに「緊密なやりとり」とは言えない。
飛行再開の際、日本政府は「米側から詳細な説明を受けた」として、「専門的見地や運用者としての立場から、合理的」と評価した。
しかし、訴訟や懲戒処分への対応といった米側の事情を理由に、国民には詳細な説明がいまだにない。
県や宜野湾市などが反発しても「地元の同意は条件ではない」と突っぱねた。
そんな中での米軍幹部の証言である。リスクが残っていることを把握しながら隠しているのか、米側から伝えられていないのか。いずれにしても国民の安全、安心を置き去りにしている。
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米軍の飛行停止措置の解除を受け、陸上自衛隊のオスプレイも飛行を再開している。
自衛官の命にも関わる問題である。事故のリスクを、誰が、どう判断しているのかを明らかにする必要がある。
安全の根拠を提示できない以上、「米側が安全と言っているから安全」と受け止めているようにしか見えない。
そういった自主性のない、米国に追従する姿勢が国民を危険にさらしているとすれば、言語道断である。
リスクを抱え、懸念や不安を払拭できない欠陥機が、上空を飛ぶことは許されない。