旅客船やタンカーから海上自衛隊の艦艇に至るまで、大型船の船底は赤く塗られていることが多いです。それは見た目の問題だけではなく、船が航行するうえで重要な意味を持っています。
貨物船や海上自衛隊の護衛艦などは、喫水線から下側が赤く塗られています。その理由は何でしょうか。
あの船もこの船も! 大型船の底が「赤い」理由 ただし赤く塗れ…の画像はこちら >>もがみ型護衛艦の2番艦「くまの」。進水式の様子(画像:海上自衛隊)。
それは船を保護するため。塗料メーカーによると、船底にはカキやフジツボ、アオノリなどの水生生物が付着しやすく、防汚のため塗料を塗装するといいます。その塗料の主成分が亜酸化銅であり、「これ自体が赤い」ために赤く塗られることが多いそうです。ただ、厳密には銅色なのだとか。
こうした船底に付着する水生生物は、船にとって侮れない存在なのだそう。重量が増し、さらに水流の抵抗も増加するため、航行に大きなエネルギーロスをもたらすといいます。たいていは停泊中に付着するため、停泊期間が長かったり、航行が緩やかだったりすると付着しやすいそうです。
ちなみに赤以外で塗られる船もあります。前出の塗料メーカーは、「漁船などには赤のほか青、プレジャーボートには黒、ヨットには白が好まれる傾向がある」と話してくれました。
またアルミ製の船では、電気的な作用により金属が腐食してしまうという理由で銅が入った塗料を使えず、赤以外で塗装するのだとか。ただし塗料の成分に応じて色が決まっているわけではなく、メーカーではピンクや紫、黄色といった色も製造しているそうです。
なお塗装の海洋への影響については、赤い亜酸化銅の場合でも水生生物の幼生に刺激となる程度であり、とりわけ問題はないとしています。