【森永卓郎の本音】政権交代にワクワクしないワケ

裏金問題や相次ぐ不祥事によって、6月にも見込まれる解散総選挙で、自民党が下野する可能性が出てきた。ところが、政権交代に対する期待感はまったくない。結果的にどうだったのかは別にして、2009年の政権交代の際には、政治や経済が大きく変わり、国民生活が改善するのではないかというワクワク感があった。今回それがないのは、仮に立憲民主党中心の政権ができたとしても、マクロ経済政策が何も変わらないと見込まれるからだ。
いつの時代も、どの国でも、国政の最大の対立は、財政金融政策で緩和政策を取るか、緊縮政策を取るのかということだ。今の岸田政権は、歴史上まれにみる緊縮政策を敷いている。デフレが継続する中で、安倍政権末期に80兆円の赤字を出した基礎的財政収支赤字は、今年度予算で9兆円まで圧縮されている。しかも税収を過少推計しているので、実質は黒字だ。
にもかかわらず、増税・負担増路線は変わらない。能登半島の地震では、震度7以上の地震で必ず組んできた補正予算も組まなかった。そのため、4月23日現在で、珠洲市の水道復旧率は41%にとどまっている。金融政策も、マイナス金利解除を断行した植田日銀は、さらなる利上げを示唆している。このまま行ったら令和恐慌到来は確実だ。
ところが、立憲民主は引き締め政策を批判しない。細かい違いはあるが、基本的には自民党と同じ緊縮政策なのだ。緩和策を掲げるれいわ新選組のような政党もあるが、候補者が少ないので、少なくとも小選挙区での選択肢にならない。だから、一番望ましいのは、立憲民主が他の野党と協調して、緩和策を打ち出すことだ。そんなに無理なことではないと思う。前回の総選挙で、野党は消費税引き下げで共闘したのだから。(経済アナリスト)

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