パリッコのおつまみ革命 第45回 熱々ざくざくの衣を噛みしめると独特の風味がふわりと広がる「ピータンの天ぷら」は変わり種でも超あり!

アヒルの玉子を熟成させて作る、中華食材、皮蛋(ピータン)。

味わいに独特の香りと深みがあるこれが僕は大好きで、中華料理店の前菜コーナーにあれば必ず、「ピータン」もしくは「ピータン豆腐」を注文してしまいます。

このピータンを使った料理、特に本場中国には様々あるようですが、僕の知る限りその店でしか出しているのを見たことがないメニューがあります。それは、四谷にある大好きな居酒屋「与志井」の「ピータン天プラ」。

与志井は中華料理店ではなく、壁に短冊メニューが並ぶ昔ながらの大衆酒場。メニューも居酒屋的オーソドックスなものが中心。なのになぜか、ピータンの天ぷら。そこにだけ妙な違和感がある。なぜピータンを天ぷらにしたんだろう? そして、なぜそれがレギュラーメニューに定着したんだろう? 当然頼んでみたところ、これが、実にいいおつまみなんですよねぇ。以来、与志井に行ったら頼まないことには気がすまないマストメニューになってしまいました。
○意外と売ってるピータン

ところで、ちょっと珍しいイメージのあるピータンですが、実は大きめのスーパーなどに行くと、しれっと棚に並んでいたりします。外国食材の専門店などならば出会える確率はさらに高いでしょう。値段も数百円ほどとそこまでお高くはなく、それで気軽に家で気軽にピータンが食べられるなんて、晩酌の楽しみがぐぐっと広がりません?

そこで今日は……そうですそうです。与志井さんインスパイアで、ピータンの天ぷらを作ってみようというわけですよね。

ちなみに、僕は家で天ぷらを揚げることがけっこうあるんですが、油の温度なんかはおおざっぱにしか気にしたことがありません。衣をたらしてみて、じゅわーっというくらいの火加減を行ったり来たりで、ニュアンスでやってます。それでもほぼ失敗がないのは、ただひとつにして最大のポイントを抑えているから。それは、「市販の天ぷら粉を使って、袋の指示どおりの配合で衣を作る」! これだけ。世の中には天ぷらがからっと揚がる裏技みたいな情報もたくさんあるし、もっと料理が上手な人ならばそれも有効でしょう。が、僕のような晩酌料理人は、上記のコツひとつで乗り切るくらいでじゅうぶんかと。

さらに最近は、こんな便利な商品もあります。

天ぷらの素なのに「もう揚げない!!」と言い切ってしまう思いきりが気持ちの良いこの商品。試しに使ってみたら、少量の天ぷらであれば、笑っちゃうくらい簡単かつ美味しくできてしまうんですよね。

では作っていきましょう。まずはピータン2個をカットしていきます。与志井のピータン天は、たぶん1/8カットだと思われ、それを目指してみようかと思ったところ……。

これだと僕の技術では、1/2カットが限界ですね。

ふたつめは、もうちょっとしっかりした半熟状。けっこう個体差があるんですかねー。こっちは1/4カットまではいけそう。まぁ、形にばらつきがあるのもまた楽しいでしょう。衣をまぶして、揚げていっちゃいますか。

あ、そうそう、ピータンって独特の香りが強いので、そのまま食べる場合は、切ってからしばらく空気にさらしておくのがいいらしいんですね。が、今回はどんな食材でもある程度強引に食べやすくしてしまう天ぷらということで、カットしてから間髪入れずに揚げてしまいました。

で、そもそもそのまま食べられる食材なので、あっという間に揚げあがり。

個人的に「天ぷらはなんでも塩派」ってことはないんですが、ピータン特有の風味を楽しみたいので、今回は塩がいいでしょう。ちょっといい塩だとより楽しいかも。

熱々をざくっとほおばってみると、塩気とともに、衣に閉じ込められていたピータンの香りがふわりと広がり、やっぱりいいつまみだ。天ぷらにしたことにより、白身のぷりぷり感というか、ちょっとゆで玉子に近づいたような食感も、ピータン好きとしては新鮮。

ピータンの天ぷら、変わり種ではありますが、超ありだと思います!

○【材料】

・ピータン:2個
・天ぷら粉:適量
・塩:適量
○【作りかた】

1.ピータンを好きな(可能な)大きさにカットする
2.市販の天ぷら粉を買ってきて、その指示どおりに揚げる。
3.塩を添える。

パリッコ ぱりっこ 1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半より酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。 この著者の記事一覧はこちら

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