マンション立地【東京都心 or 郊外】住み心地はどう違う? それぞれの特徴を比較解説

今、東京首都圏で人気が高まっているのが「郊外エリア」。先日発表された「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」でも、7年連続で「横浜」が総合1位を獲得し得票数も大幅にアップ、「大宮」は過去最高の2位まで人気を伸ばすなど、東京郊外へアツい視線が注がれていることがわかります。

継続中の人気の背景には、物件価格の高騰やリモートワークの浸透によるライフスタイルの変化、それに伴う価値観の見直しなどが考えられます。以前の私の記事「郊外物件を買うなら『6つの条件』で見極めを – “資産価値が下がりにくい”郊外物件とは?」にて、郊外物件の見極め方を解説しましたが、今回は東京都心部と郊外、2つのエリアを比較。アクセスや防災、コミュニティまで、それぞれのエリア特徴や住んだ時のメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

参考:「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」

■東京都心 or 郊外? 6項目で比較解説

マンション購入を検討する際に、多くの方がエリア条件から考えるかと思います。ここでは、東京都心部か郊外か、それぞれの傾向や判断ポイントについて6つの軸で解説していきます。
【1】マンション立地で「交通利便性」はどう違う?

まず東京都心部と郊外の大きな違いとなるのが、何より交通利便性でしょう。都心部では、交通インフラの中心は電車です。徒歩圏内で複数駅、複数路線が使える立地もめずらしくありません。最近はLUUPやシェアサイクルなど、次世代型交通サービスも普及しているため、多少駅から遠くても自転車を所有しなくても快適に暮らすことができるようになっています。都心部の方が地価が高いぶん郊外に比べて専有面積や共用部が限られるため、こうした街のシェアサービスをうまく使うことで、自転車などの所有物で自宅スペースが圧迫されることを軽減できます。気をつけたいのは、立地によっては、使いたいタイミングでいつもシェアサイクル等が不足している、ということ。家選びの際には、近くにサイクルステーションなどがあるかを確認するだけでなく、専用アプリをインストールして空き状況の傾向など確認してみるのも良いでしょう。

郊外における交通インフラは、都心部ほど駅や路線数が多くないため、電車の一駅間が長くなります。自転車とバス便も併用することが必要です。バスは本数や方面を確認しましょう。自治体によっては、出産育児支援策として妊婦さんの時期に無料で乗れるバスチケットなどを配布するところも(中央区、港区など東京都心部でも該当エリアあり)。該当される方はせっかくの制度なので活用しましょう。もし都心部への通勤が頻繁に発生するのであれば、混雑具合も知っておきたいところ。始発駅であれば座れることもあるので、少々面倒ではありますが、平日の通勤タイミングに電車に乗って確認してみると住んだ後に困ることを防げます。
【2】マンション立地で「生活利便性」はどう違う?

都心であればあるほど、基本的に大型のスーパーは少なくなります。「まいばすけっと」や「ローソンストア100」などの小型スーパーや、輸入食材を中心に取り扱う高価格帯スーパーのみになることも。特に生鮮食品はあまり期待できないので、ライフスタイルに合わせてネットスーパーを上手に利用するなどの工夫を。逆に外食が多い世帯であれば、スーパーよりも外食先の選択肢が多い立地を選んだ方が便利でしょう。その場合、繁華街に近くなり騒々しい場所にはなりがちであることを覚悟する必要があります。都心部のいわゆる「閑静な住環境」が得られる住所は限られている分、高価格帯になります。

都心部で意外と期待できるのが、商店街。実は都内都心部でも昔ながらの商店街は多く残っています(港区麻布十番、渋谷区初台、世田谷区の池尻・三軒茶屋など)。駅によっては複数の商店街が使い分けられることも。惣菜などが買える店が多く揃う商店街だったり、飲み屋などの飲食店が多かったりとそれぞれに特性があるので、自分にとって便利に使えそうか、人手の多い時間帯に街を歩いて確認してみましょう。

一方、駅前やロードサイドなどにある大規模商業施設に、街の生活利便機能を集約しているのが郊外。小さな子どもがいるファミリー世帯が買い物しやすいように、一箇所ですべての用事が完結するようになって設計されているため便利な反面、滞在時間が長く混雑しやすい点がネック。特に土日のスーパーの会計レジは週末の買い出し客で大混雑することも。最近の再開発によって大規模マンションとともにつくられた大型スーパーではセルフレジや自動決済システムが導入されているなど、こうした課題への手が打たれている店も出てきています。こうした工夫があると、日常的なストレスを減らしてくれるでしょう
【3】マンション立地で「エンターテインメント施設」はどう違う?

映画館のような大型エンタメ施設は、新宿駅・渋谷駅・池袋駅など、ターミナル駅周辺に集約されています。ほとんどのエリアにはありません。一方で、ジャズバーやライブハウスなど大人向けエンタメスポットは都内各所で見つかります。落語などの伝統芸能がお好きな方は、寄席はもちろん区民ホールなどでも定期的に催しを行っているところも多いので見てみると良いでしょう。また都内各区では、文化人ゆかりの庭園や記念館などの文化施設も少なくありません。徒歩での散策が楽しいのは都心部ならではの楽しみといえます。

郊外では大規模商業施設に、映画館やスーパー銭湯・サウナ、屋内プールやジム、広いフードコートまで、さまざまなエンターテイメント施設が入居しています。自分が検討するエリアの施設に入っている施設によって、新たな趣味ができるかもしれません。
【4】マンション立地で「自然環境」はどう違う?

緑地面積で見ると東京都心部も少なくありません・・が、新宿御苑や小石川後楽園などの入園料がかかる公園、元気いっぱいに走り回る小さいお子さんを連れて行くのは難しい庭園も。小さくても良いから家のすぐ近所に子どもを遊ばせることができる児童公園が欲しいのであれば東京の西側、水辺や木々が生い茂る広々した公園が欲しいのであれば東京の東側がおすすめです。DINKsのご家庭で、休日にゆっくり静かに散策する庭園や神社仏閣がほしい、といった方であれば六義園や小石川庭園、護国寺や雑司ヶ谷霊園など、歴史的名所が多い文京区・豊島区の区境エリアもおすすめ。文化的要素が強い緑地は、郊外より都内に軍配が上がります。

しかし、なるべくのびのびとお子さんを緑に触れて遊ばせたい、というご家庭には、やはり郊外の方がよりニーズを満たしてくれるでしょう。遊具が設置されていたり、グラウンドやテニスコートなどのスポーツ施設、農作業体験ができる公園、動物が飼育されていることも。
また、公園のような整備された場所だけでなく、川や森などを身近にできることが、郊外の大きな魅力といえます。子どもには本物の自然に触れてほしい、というアウトドア思考の強いご家庭であれば、なおさら。登山やトレッキングを愛する人であっても、都心部に住んで週末に山へ通う・・ということはなかなか現実的ではないもの。適度に都内にアクセスしやすい郊外の土地で、電車やバスなどで気軽に自然にアクセスできる場所を選ぶと、QOLは大きく上がるでしょう。車を持っているか否かで選択エリアは大きく変わりますが、将来的に住み替えたり売却する可能性があるのであれば、車がないと買い物すらも不便になるような立地はやはりおすすめしにくい、というのが私の見解です。
【5】マンション立地で「コミュニティ」はどう違う?

都心部であればあるほど、人の数が多いため他人への関心が下がり、コミュニティへの帰属意識は低くなります。干渉されることが苦手な人なら、都心部である方が居心地よく暮らせそうです。ただタワーマンションや、中小規模でもファミリーが多く、共用施設が設けられているマンションは、マンションがそのまま一つの小さな村のような側面があります。そのため、マンション内コミュニティが築かれていることも少なくありません。ただ、そこで覚えておいていただきたいのは、連携意識の弱いマンションは、将来的にマンション管理側面で考えた時にやや不安要素があること。完全な不干渉ではいられないのがマンションライフなので、ここはマンションを購入される以上は資産価値保有や防災対策の観点でも、我関せずという態度よりも関心を持って関わってもらえればと思います。

さて、では郊外はどうかというと、都心部に比べて圧倒的に人の数が絞られるため、「顔が見える」距離感になります。同じマンション内に住んでいなくてもご近所さんとして挨拶するなど、同じエリアに住む住民同士のつながりが大事に。地域のお祭りなどへの参加や協力を求められる場合も。地域住民間での協力体制を築くことは防災観点でも重要で、自分自身や自分たち家族を守ることにも繋がります。心地よいと感じる距離感は人それぞれですが、同じエリアに住む者として、周辺隣人に前向きに関わる方がトラブルを避けやすく有事の助け合いに繋がることも多いでしょう。
【6】マンション立地で「防災」はどう違う?

人が密集する都心部で最も怖いのは、地震発生時の倒壊や火災。特に木造建築物が密集するいわゆる木密地域は、危険度が高くなります。防災対策から建て替え、区画整理が予定されている場合、自治体ホームページで確認ができます。予定があるか、予定があるならば何年先なのか、時間軸を把握しましょう。その地域としての将来的なリスクをどのように捉え、どのようにリスクヘッジをしようとしているのかを知ることができます。その点、湾岸エリアは一定以上の離隔をとって設計されているため、被災時のレスキューもしやすい街並みになっていると言えます。湾岸か内陸かに関わらず水害発生時の浸水レベルは必ず確認し、自宅がどのレベルの災害時にどの程度の被災をする可能性があるのか確認しましょう。

郊外の場合、整備されていない自然を身近にしたいと思って場所を選んだ場合、必然的に水害や土砂災害などの自然災害がそれだけ身近になりえます。ハザードマップや被災時の避難経路などを確認して、自宅の立地はどれくらいのリスクがあるのか事前に把握した上で購入を意思決定しましょう。そして何より、日頃からの防災対策を個人レベルでも行っておきましょう。
■都心部か郊外か…選ぶ時の注意点

資産価値を考えるなら、マンション価格だけでなく「街の発展性」もみよう

もしも将来売却や住み替えの可能性があるなら、資産価値観点でも考えたいところです。郊外の場合、都心部に比べてその「中心街」となりえる街の数はグッと少なくなります。そうした中心街から離れれば離れるほど、暮らしやすさは減少します。価格が安いからと検討中のそのマンション、年齢を重ねた時も便利に住めるでしょうか? 今後少子化が進む上で地域全体の人口が減ることは免れません。その時に、暮らしづらい立地のマンションは、買い手がよりつきづらく、売却が難しくなるでしょう。今は特に支障がなかったとしても、少し先の未来まで見通して「本当にこの立地で住みやすいだろうか?」という視点を持っておきましょう。

資産価値が保たれやすいエリアの基準の一つとして、「具体的な目処が立った上での開発予定があるか」が挙げられます。例えば、小川駅(東京都小平市)、八王子駅(東京都八王子市)、鷺沼駅(神奈川県川崎市)、和光市駅(埼玉県和光市)、船橋駅(千葉県船橋市)などは、完成予定年度などが明示されたうえでの再開発が進行中です。

将来を見据えて街をメンテナンスしていく想定があるのか。自治体ごとの見通しの有無の差が、将来大きくエリアとしての人気の差を生み出していくことはほぼ確実です。その時を見据えて、今検討中の街の将来を慎重に見極めましょう。
子育て支援など手当や助成金は「対象条件」を確認して

また、子育てのしやすさや教育観点から郊外を検討される方も多いかと思います。郊外だけでなく都心部にも当てはまることですが、一つ気をつけたい点としては、子育てなどの手当や助成金制度。「子育て支援が充実している」という評判が高い自治体でも、所得制限などの諸条件が設けられていることも。もしもそうした支援策を期待して住む街を選ぶのであれば、自分が適用対象に該当しているのかきちんと確認してから意思決定を。制度の数の多さや口コミの評判は必ずしもあなたに当てはまるとは限りません。「話が違う!」となる前に、ご自身にとってはどうなのか、必ず確認しましょう。
■都心か郊外か、”したい暮らし”に合わせた選択を

いかがでしたでしょうか? 東京都心部か郊外か。どちらが絶対的に正解かということはなく、ご自身あるいはご家族にとってベストな回答はどちらなのか。価値観や将来のプランを考えて結論を出すことが欠かせません。家族間のすり合わせや、将来的な見通しなく決定してしまうのが一番よくありません。後々トラブルの元にもなるでしょう。逆に考え尽くした結果の選択であれば、きちんと選んだという納得感もあるぶん、後悔が先立つよりもその時にどうすべきか冷静に選んでいくことができるはず。ぜひ「選んでよかった!」と笑顔で暮らせる住まいと出会えることを願っております。

針山 昌幸 はりやま まさゆき 株式会社Housmart 代表取締役。不動産仲介会社向けの営業支援システム「プロポクラウド」やメディア『マンションジャーナル』など、住まい選びをより自由にすべく幅広く事業を展開。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』(日本実業出版社)。 この著者の記事一覧はこちら

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