[社説]裏金と安倍派幹部 真相解明の証人喚問を

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、衆参で延べ4日間にわたり政治倫理審査会が開かれた。
しかし、誰がいつ始めたのか。なぜ還流は続いたのか。疑念は解消されるどころか深まるばかりだ。
18日は衆議院の政倫審に、安倍派の事務総長を務めた下村博文氏が出席した。
安倍派は2022年に資金還流をいったんやめ、後に復活させた。下村氏は還流の扱いについて話し合われた派閥幹部らの協議に参加しており、発言が注目されていた。
ところが「知らぬ存ぜぬ」の繰り返しで、納得できる説明はなかった。
還流復活の経緯について、派閥座長を務めた塩谷立氏は今月の政倫審で、復活させる方向で話し合ったと説明していた。一方、事務総長だった西村康稔氏や参院側会長だった世耕弘成氏は「結論は出ていない」としており証言に食い違いが出ていた。
これに対し下村氏は、還流に代わり議員個人のパーティー券を派閥が購入する案が出たとしたものの、「誰が最初に言ったのかは覚えていない」と明かさなかった。
還流が始まった経緯に元会長の森喜朗氏の関与があったかどうかについても「そういうことがあったことも承知していなかった」と人ごとのようだ。
それどころか派閥の幹部でも、政治資金の経理や会計についての報告は「全くなかった」とした。まるで事務局の独断で還流が行われてきたかのような発言で、にわかに信じ難い。責任逃れの姿勢が目に余る。
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裏金事件を受け、参議院でも初めての政倫審が開かれた。世耕氏、西田昌司元政調会長代理、橋本聖子元五輪相の3人が出席したが、ここでも実態解明には程遠いやりとりが続いた。
特に安倍派の実力者「5人組」の一人、世耕氏は当事者意識の欠如をあらわにした。
安倍派は、参院では改選対象の議員にパーティー券の販売ノルマ分と超過分を合わせ全て還流させていた。参院を取り仕切る世耕氏は把握してしかるべきだが、「勝手に決まっていた」という。
これには、続いて登壇した西田氏が「(世耕氏答弁は)みんな納得できない」としたのも当然だ。
同じく「5人組」の萩生田光一前政調会長は、政倫審に出席すらしていない。「党の判断に従った」と釈明するが、派閥の決定を盲信した結果の「裏金」ではないか。
後ろ向きな姿勢から反省の意はうかがえない。
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岸田文雄首相は裏金に関係した党所属議員の処分について「通常国会中に判断することを考えている」と述べた。
自民党大会では、政治資金規正法などに抵触する疑いが生じた議員の処分を厳格化するなど党則など内規も改正された。裏金事件について党としての処分は当然厳しくあるべきだ。
一方、国民への説明責任はいまだに尽くされていない。政倫審で解明されないのなら、衆参それぞれで証人喚問しかない。

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