兵庫県とNTT西日本が、兵庫県内の高校生のeスポーツへの興味関心や意欲向上に繋げることを目的として1月20日より開催した「HYOGO 高校生eスポーツ大会」の決勝大会が2月12日、「eSPORTSアリーナKOBE三宮」にて行われた。
「HYOGO 高校生eスポーツ大会」は、部活動単位での対抗戦となる「HYOGO 部活動トーナメント」と、学校の枠を越えて編成されたチームによる「HYOGO 高校生フレンドカップ」と呼ばれる2つの予選大会を実施。「HYOGO 部活動トーナメント」には7チーム40名、「HYOGO 高校生フレンドカップ」には7チーム46名が参加し、決勝大会は「HYOGO 部活動トーナメント」の上位3チームと「HYOGO 高校生フレンドカップ」の優勝チームによるトーナメント戦で争われた。
冒頭、NTT西日本 兵庫支店 樋口支店長が登壇し、「本大会は県内高校生のeスポーツへの興味関心・意欲向上やeスポーツそのものの裾野拡大につなげることを目的としています。選手個々人のプレイのみならず、選手たちのコミュニケーションやチームワークにもご注目いただければと思います」とアピールした。
競技タイトルは、5対5で対戦するシューティングゲーム『VALORANT(ヴァロラント)』。決勝には「HYOGO 部活動トーナメント」から、神戸市立科学技術高等学校、彩星工科高等学校、兵庫県立龍野高等学校の3チーム、「HYOGO 高校生フレンドカップ」から県立高校合同チームである「OTHN」が進出。「HYOGO 部活動トーナメント」から勝ち上がった3チームには、大会当日まで現役プロによるコーチング指導を受けられるというアドバンテージがあったが、ダークホースとも言われた県立高校合同チームの「OTHN」が激戦の末、見事に決勝を制し、兵庫No.1チームの栄冠を勝ち取った。
白熱の決勝大会を観客席で見守った兵庫県知事の齋藤元彦氏は、優勝チームを称賛するとともに「すべての選手の健闘を称えたい」との言葉を贈り、「来年以降も続けさせていただいてもよろしいですか?」と呼びかけ、来年以降の大会継続を約束した。
○■「HYOGO高校生eスポーツ大会」が目指したもの
「eスポーツは、地域の活性化への効果、年齢、国籍、性別、障がいの有無に関わらず誰でも楽しめる特性がある」と話す兵庫県 県民生活部スポーツ振興課 主任スポーツ振興専門員の大久保裕美さん。2022年10月に実証事業として開催された「HYOGO eスポーツフェスタ in 城崎温泉」の盛り上がりから、eスポーツが地域活性化に貢献するひとつになると実感。次のターゲットとして、高校生のeスポーツへの取り組みを広げていくことを応援するために、自治体が主催する高校生大会としては関西初の取り組みとなる「HYOGO高校生eスポーツ大会」を開催することになった経緯を振り返る。
高校生によるeスポーツ大会を開催するにあたり、どれくらいの参加者が見込めるのか、どのゲームタイトルが良いのかなど、不安と課題は多かったが、「公民連携で実施することで、効率的で効果的な大会運営が可能となった」という大久保さん。さらに、「事業内容の適正について行政と企業が協議することにより、常に情報を共有でき、新たな取り組みを見いだすことができた」ことが今回の実施におけるひとつの成果になったという。
一方、兵庫県とともに主催として大会をサポートしたNTT西日本 兵庫支店のビジネス営業部 企画担当 担当課長である河本陽介さんは、同社が運営するeスポーツ体験施設「eSPARKLe KOBE」に、2021年12月に齋藤知事が視察に訪れたことをきっかけに、「eスポーツの良さをご理解いただき、推進していこうという流れになったのではないか」と推察。
城崎温泉でのイベントに引き続いての共催となったが、「eスポーツをしっかり定着させ、普及していくために、部活動などでeスポーツに取り組んでいる学生たちに向けたイベントを行いたい」という兵庫県からの相談を受け、「eスポーツも将来的にはリアルスポーツと同じように部活動での取り組みが一般的となるよう、部活動で活動する生徒の目標となる大会」の開催を目指したと振り返る。
さらにNTT西日本では、兵庫県に企画提案を行う際には、“eスポーツの裾野を拡大する”という兵庫県の目的に対して、「eSPARKLe KOBEでの体験会」の実施を提案。さらに、「競技力を引き上げることがスポーツには大事」という想いから、ただ大会でプレイをするだけでなく、実際の競技シーンで活躍しているプロによるコーチングの実施を提案するなど、大会の開催にとどまらず、eスポーツへの理解促進や発展までを踏まえた具体的な提案も盛り込まれた。
NTT西日本のサポートについて大久保さんは「行政として、eスポーツに関しては環境面などでかなり弱い面もあったが、専門的な情報を共有していただいたり、通信機器のサポートなど、すごく勉強させていただく面も多かった」と振り返る。大会で使用された『VALORANT』を開発したRIOT GAMESとのやりとりなども、「こちらでは伝えきれないところもきちんと言葉にして、こちらの意向も踏まえて伝えていただけた」と、あらためて感謝を述べる。
決勝大会を見ながら「会場に来た高校生たちのeスポーツに対する姿勢が、ほかのスポーツと変わらないところは、皆さまも肌で感じていらっしゃるのではないか」という大久保さん。兵庫県としては、それぞれの学校の事情があるため、「こちらからeスポーツ部を作ってくださいとはなかなか言えない」という現状を見ながらも、「今回の大会で、かなりeスポーツの教育的価値が変わってきたと思っていますし、その手応えも感じています」と力を込める。
それを踏まえて、eスポーツがどれくらい教育に効果をもたらすかを検証しながら、「eスポーツは、年齢や性別、国籍、障がいなどの壁を越えて、誰でも楽しめるグローバルな取り組みが特徴。こうしたeスポーツの可能性を、ここ兵庫から広げていくことを狙いとして、特に若者への裾野拡大を期待し、高校生の大会を今後も継続させたい。そして、高校生だけでなく、いろいろな世代の方にeスポーツを楽しんでもらえるように、eスポーツの良さが伝わるような事業を展開していきたい」と決意を新たにする。
「課題やトラブルは様々ありましたが、高校生の皆さんの真剣にeスポーツに取り組まれている姿、学校関係者の皆さんのeスポーツをしっかりと理解して、生徒を応援したいと思っている姿などに非常に感銘を受けています」と河本さんは話す。
「大会の主役である高校生の皆さんに良い大会だった、参加して良かったと思ってもらえること、また高校生の皆さんを支える学校関係者の皆さんがeスポーツについて正しく理解していただけること、部活動として認識していただけること、そして多くの生徒・学生の皆さんがeスポーツをやってみたい、もっと頑張ってみたいと思ってもらえるきっかけになればと思います」(河本さん)
さらに、「eスポーツには、教育以外にも有用性があると思っているので、それをいかに地域課題の解決に結び付けられるかが今後の課題」と続ける。「eスポーツによって地域を元気にしていきたい。今回の大会にもたくさんの企業の方に協賛していただいておりますが、そういった輪をさらに大きくして、継続的に、持続的に、歴史に残るような大会をもっと運営していきたい」と今後を展望する。
それと同時に、NTT西日本グループが運営する「eSPARKLe KOBE」についても、「現在1,300人ほどの会員がいて、非常に賑わっている施設ですが、貸切利用も多く、修学旅行や校外学習でのキャリア教育や探求教育の一環として利用されるほか、企業における社員コミュニケーションのツールとしても活用されている」という実例を示し、「企業や団体のエンゲージメント向上やコミュニケーションの強化などのソリューションとして、しっかりeスポーツを提案していきたいですし、それは兵庫県だけでなく、西日本全体に広げていきたい」との意気込みを明かした。