日経平均株価が34年ぶりに過去最高値を更新するなど、世界的な株価上昇が続いている。そのなかで新NISAを中心とする投資セミナーに、老後資金を増やそうとサラリーマンが大挙して集まっている。彼らの関心の中心は、米国株や全世界の株式に分散投資する投資信託だ。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が用いている外国株式の期待リターンは、7・2%となっている。10年で倍増の利回りだ。お上までが高い期待をしているのだから、やはり外国株への投資だというのが、庶民の判断になっているのだ。
私は、いまから株式投資を始めるのは危険だと、何度も警告をしてきた。一つは、バブル崩壊のリスクだ。株価はじわじわと上がるが、下がるときは急落する。現在の株価がバブルかどうかは意見が分かれるが、私はバブル崩壊が間近に迫っていると考えている。
もう一つ、外貨投資には、円高のリスクがある。日銀の植田総裁は22日の衆院予算委員会で、「日本経済はデフレではなくインフレの状態」と述べて、金融引き締めを強く示唆した。一方、米国は年央から利下げが見込まれている。日米金利差が縮小するのだから、今後、高い確率で円高になる。それは、その分、外国株投信が減価するということだ。
実は、老後資金のためには、NISAの他にイデコ(個人型確定拠出年金)という制度がある。イデコもNISAと同様、運用益は非課税だ。また、イデコは掛け金が税制上、所得控除される。例えば限界税率が30%の人は、3割引きで投資商品が買えるということだ。
さらにイデコは、預金のような元本保証の商品にも投資できる。だから、NISAよりイデコのほうが有利なのは明らかなのだが、NISAばかりが注目されるのは、一体なぜなのだろう。(経済アナリスト・森永卓郎)