映画『帰ってきた あぶない刑事』(2024年5月24日全国公開)に登場する日産自動車「レパード」の実物に遭遇した。覆面パトカー仕様のレパードはいったい、どんなクルマなのか。「Nostalgic 2days」(ノスタルジック2デイズ、2024年2月17日~2月18日にパシフィコ横浜で開催)の会場でオーナーさんに話を聞いた。
レパードが映画に出演! 経緯は?
「Nostalgic 2days」の会場でスポットライトを浴びていたのがゴールドツートンのF31系「レパード」だ。晴れがましい姿で展示してある理由は、横に掲げてあった看板を見てすぐにわかった。今年公開予定の映画『帰ってきた あぶない刑事』のポスターだ。
運転席側のルーフに赤色灯がちょこんと乗っかった覆面パトカー仕様のレパードを眺めていると、1980年代に見ていたテレビドラマ『あぶない刑事』で、運転席にユージ(柴田恭兵さん)、助手席に相棒のタカ(舘ひろしさん)が乗り、派手なカーアクションを展開していたシーンを思い出した。このレパードにはどんなストーリーがあるのか、オーナーさんがいらっしゃったので話を聞いてみた。
「コイツは昭和62年(1987年製)のF31レパードで、前期型では一番いいグレードの3.0 Ultimaです。一昨年前、東映さんから『レパードを映画で使用したい』との相談が専門店のカーショップフレンドさんに入ったそうで、ゴールドのツートンとの指定があったことから、そのカラーを購入・所有していた私のところに話が回ってきたんです」
映画出演のオファーがあったことから、オーナーさんもいろいろと工夫したそうだ。
「元々はエアロパーツをつけたりホイールを変えたりして楽しんでいたんですけれども、その話があった時点で全てノーマルに戻し、さらに赤色灯やリアのアンテナをネットオークションで見つけて『あぶない刑事』仕様にしました。東映の劇用車担当の方は、当時の再現映画じゃないのでそこまでやらなくてもいいと言っていたらしいのですが、やっぱりファンの方も多いし、きっちりと当時の姿に戻した方がいいんじゃないかと考えまして、挑戦したんです」
「ということは、当然、あの2人がこのシートに座ったんですね?」と話を向けると、「そう、その証拠にこれをみてください」とおもむろにドアを開けて見せてくれたのは、助手席側に舘さんと柴田さん、運転席側にトオルの名で出演していた仲村トオルさんのサインがバッチリと入っているサンバイザーだ。となると、これはもう“お宝”以上の存在に昇華している。
ソアラがライバル? 高級クーペらしさが魅力
F31型レパード自体は、旧プリンス自動車のメンバーによって開発されたF30型に続く2代目として1986年に登場。R31型「スカイライン」と基本部分を共用することでコストダウンを図りながら、2ドアモデルのみの“プライベートクーペ”として世に出ている。
ロングノーズに四角いコンパクトなキャビンを持つそのスタイルは、ライバルだったトヨタ自動車「ソアラ」と双璧をなす1980年代高級クーペの証。インテリアは濃いブラウンカラーがベースで、ドライバー眼前のエレクトロニックメーターや垂直のダッシュボードに取り付けられた高級オーディオなどが当時の高級車らしさを主張していて楽しい。
展示車の3.0Ultima(究極を意味するULTIMATEから採った名称)グレードは、自然吸気の「VG30DE」型3.0L V型6気筒 24バルブツインカムエンジンを搭載。最高出力は185PSだ。しかし、同時期のZ20型ソアラが搭載する直列6気筒 3.0Lツインカムターボはすでに230PSを発揮していて、発売当初から水を開けられてしまい、いきなり劣勢を強いられた。1988年のマイナーチェンジでは、レパードも255PSまで出力を向上したVG30DETターボエンジンを搭載したが、時すでに遅しといった感じだった。
とはいえ、クルマの人気とは面白いもので、あぶない刑事シリーズの劇中車として採用されたことがきっかけとなり、それ以降に追加制作された映画シリーズにも準主役級(?)として度々登場したレパードは、今では人気がぐんぐん上がっているとのこと。登場から40年近く経った今では、ソアラを逆転するほどの中古価格をキープする勢いがあるという。展示車両の近くにあったカーショップフレンドのブースには、程度のいい極上レパードがズラリと並んでいた。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら