「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
生活費のうち、定額、もしくはほぼ定額の金額を毎月支払わなければならない費用を「固定費」と呼びます。例えば、賃貸住宅であれば家賃や共益費は、毎月定額の支払いが必要となるので、固定費となります。また、ガス代、電気代、水道代は、季節によって多少の変動はありますが、ほぼ定額の支払いが発生するので、固定費となります。今回は、その固定費の1つである「ガス代」に着目してみようと思います。
2016(平成28)年4月の電力の小売全面自由化に続いて、2017(平成29)年4月に実施されたのが、都市ガスの小売全面自由化です。
そこで、今回は、ガス会社の料金プランによってどのような違いがあるのか、具体的に計算してみようと思います。なお、今回は「都市ガス」を対象とし、プロパンガスを除きます。プロパンガスの特徴等については、第113回コラムをご参照していただければと思います。
○仮定
仮定として、1人暮らしで、都市ガスの種類は13A、ガス使用量は1ヵ月あたり11とします。都市ガスを使用する単身世帯での「ガス代」を算出してみます。なお、現在では、都市ガスと電気のセット契約による料金プランもありますが、今回は、都市ガスのみで契約した場合を見ていきます。
一般的な都市ガス料金は、月ごとの使用料に応じて一定額の支払いがある「基本料金」と1あたりに支払う「従量料金」を合計した金額となります。「基本料金」および「単位料金」は月々のガス使用量に応じて異なります。計算方法は、下記のとおりです。
【1】基本料金
【2】従量料金「単位料金×ガス使用量」
【1】+【2】=1カ月あたりの都市ガス使用者が支払う金額となります。
○東京ガス
供給エリア:東京地区等
料金プラン:一般契約料金(2023年11月分)
【1】基本料金(0~20):759.00円
【2】従量料金「単価料金×使用量」
157.30円×11=1,730.30円
【1】+【2】=759.00円+1,730.30円=月額2,489円(円未満切捨て)
参照:都市ガス料金の計算方法(東京ガス)
○TOKAI都市ガス
供給エリア:中京圏(愛知県、岐阜県、三重県の東邦ガス株式会社の供給区域)
料金プラン:一般料金(2023年11月分)
【1】基本料金(5~20):736.23円
【2】従量料金「単価料金×使用量」
204.20円×11=2,246.20円
【1】+【2】=736.23円+2,246.20円=月額2,982円(円未満切捨て)
参照:都市ガス料金の計算方法(TOKAI都市ガス)
○ニチガス
供給エリア:東京ガス地域(東京地区等)
料金プラン:地域別ガス料金(2023年11月分)
【1】基本料金(5を超えて20まで):795.30円
【2】従量料金「単価料金×使用量」
150.04円×11=1,650.44円
【1】+【2】=795.30円+1,650.44円=月額2,445円(円未満切捨て)
参照:都市ガス料金の計算方法(ニチガス)
○結果
今回は、3つのガス会社の1ヵ月あたりの電気代を計算してみました。前回のコラムで計算した「電気代」よりも「ガス代」のほうが、ガス会社による1ヵ月あたりの支払額に大きな差はないように感じました。ただし、自由化による競合によりさまざまなサービスが提供されています。例えば、ポイントサービス(月々の都市ガス料金に応じてポイントが貯まり、貯まったポイントで商品や電子マネー等に交換できる)、見守りサービス(ガス使用量が極端に少ない場合に離れた家族にメールで通知する等の連絡サービス)、駆けつけサービス(水回りや電気設備等、室内の緊急トラブルに対応するサービス)などがあります。料金プランの設定金額のみで比較するのでなく、高齢の家族が遠くに暮らしているのであれば、見守りサービスが利用できるガス会社を選択する、通常利用しているポイントが貯まるサービスがあるガス会社を選択するなど、ガス会社が提供している多様なサービスの中身を確認した上で、ガス会社を選択するとよいでしょう。
高鷲佐織 たかわしさおり ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。 資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構 FPスタッフ。 この著者の記事一覧はこちら