テスラ株価暴落で3兆円もの損失、「有害化」するブランドとイーロン・マスクの混乱

電気自動車メーカー「テスラ」は今、イーロン・マスクCEOのがワシントンで混乱を引き起こす中、有害なブランドと化している。

現地時間3月10日、イーロン・マスク氏のXフィードには、いつものように偏執的な政治的投稿、民主党や政府機関への攻撃、そしてドナルド・トランプ大統領(今も自身のプラットフォームTruth Socialを使用)に関連するアカウントからのコンテンツが並んでいる。その中にはテスラに関する投稿も数多く含まれている。テスラは電気自動車メーカーだが、マスクは現在、いわゆる政府効率化局(DOGE)で行政機構の解体と数千人の政府職員の解雇を進めているにもかかわらず、依然としてCEOの座に留まっている。

マスクはテスラModel Yのデザインと機能を紹介する男性のTikTokを投稿。その前には、反LGBTQ+活動家ロビー・スターバックや、MAGA陰謀論者ローラ・ルーマーからのテスラ支持コメントを拡散している。週末には、2026年までに製造予定の2人乗りロボタクシー、サイバーキャブのプロトタイプ動画をテスラファンアカウントから共有。新型サイバートラックのオーナーによる動画も投稿し、「店舗やオフィスへの数々の攻撃にもかかわらず、@Teslaを支持してくださる皆様に心からの感謝を」と述べている。この発言は、最近のテスラ販売店での複数の火災(一部は放火の疑い)や、銃撃による展示場の破壊被害を指している。

マスクのPR活動強化の背景には、テスラの株価不振があるとみられる。株価は3月10日、15パーセント以上急落し、2010年の上場以来最悪の取引日の一つを記録。この暴落で、11月のトランプ勝利後に得られた株価上昇の恩恵も完全に消失した。当時、投資家たちは大統領当選者の最大のスーパーPACドナーが率いる企業への投資を有望視していた。12月中旬のピーク時から価値の50パーセント以上(約8,000億ドル相当=約118兆え)が失われている。

この急落の要因には、市場全体の下落や景気後退の懸念が含まれる。しかし、マスクのワシントン進出後の行動ーーナチス式敬礼と広く認識された仕草、連邦機関の一括廃止の試み、Xでの極右的な誤情報の継続的な発信ーーにより、テスラブランドも特に有害な存在となった。先月、高まる反発はテスラ・テイクダウンという正式な抗議運動へと発展。世界各地のテスラセンターでの定期的なデモ開催、ボイコットの呼びかけ、投資家への株式売却の要請が行われている。

これに対しマスクは、テスラ・テイクダウンを裕福なリベラル派による偽装工作だと非難。平和的な抗議活動と、ディーラーへのモロトフ・カクテル投擲といった放火の疑いのある攻撃とを同列視した。さる3月8日には、Xで根拠のない主張を展開。「調査」によって、ジョージ・ソロス、リード・ホフマン、リア・ハント・ヘンドリックスら裕福な慈善家たちが、民主党の資金調達プラットフォームActBlueを通じてテスラ抗議運動の背後組織に資金提供していると述べた。これはActBlueの仕組みーー実際には寄付者が民主党の政治候補者やリベラル団体に送金するためのシステムーーを誤って解釈したものだ。さらにマスクは、すでに死去しているハーバート・サンドラー(2019年没)とパトリシア・バウマン(2024年没)をテスラ・テイクダウンの資金提供者として名指しした。

ホフマンは、Xでこの根拠のない非難に反論。「これもイーロンによる私についての虚偽の主張の一つです:私はテスラへの抗議活動に一切資金提供していません」と、2000年代初頭にPayPalでマスクと共に幹部を務めたLinkedInの億万長者共同創業者は述べた。「暴力は容認しません。しかし、アメリカ国民が彼に怒りを感じているのは明らかですーー行動には結果が伴うことを受け入れるより、人々の怒りを言い逃れする方が簡単なのでしょう」。これに対しマスクは「お気に入りの島での休暇について語ってください」と返信し、故人である人身売買犯かつ小児性愛者のジェフリー・エプスタインのカリブ海の私有島をホフマンが訪れていたことを根拠なく示唆した。ホフマンは多くの富裕層や権力者同様エプスタインと面識があったものの、人身売買組織との関与を示す証拠は一切ない。昨年のインタビューで彼は、マスクによるこうした根拠のない示唆が続いたため、警備スタッフを雇う必要に迫られたと明かしている(ハント・ヘンドリックスはマスクのActBlueに関する非難へのコメントを控え、マスクや極右扇動者から頻繁に標的にされるソロスも公式見解を示していない)。

一方マスクは、メルセデスやフォルクスワーゲンなど他の自動車メーカーとナチス政権とのつながりを指摘するテスラ支持アカウントの投稿を拡散。アリッサ・ミラノがテスラをVWの電気自動車に乗り換えたという投稿には「アリッサ・ミラノはヒトラーを愛している」と書き込んだ。また、テスラの財産を攻撃する「集団」がUnitedHealthcare CEOブライアン・トンプソン殺害容疑者のルイジ・マンジョーネに「触発されている」という自称ナショナリストユーザーの根拠のない主張に「なるほど」と返信した。

テスラ株が大打撃を受ける中、Xは先日システム障害に見舞われ、マスクはこれを「大規模なサイバー攻撃」によるものと説明したが、詳細は明かさなかった。サイトが機能していた際、マスクはシアトルのテスラ展示場で3月9日深夜に発生し、複数のサイバートラックが損傷した火災について、荒唐無稽な陰謀論を広めることに躍起になっていた。「テロ:複数の民主党系[非政府組織]がテスラのディーラー、スタッフ、車両に対する組織的な攻撃を行っている」と、右派アカウントの匿名著者が証拠なく主張。「昨夜、シアトルで多数のサイバートラックが放火された。民主党支持者たちはますます追い詰められ、暴力的になっている」。実際には、火災は現在調査中で、容疑者の身元や政治的所属は明らかになっていない。それにもかかわらず、マスクは民主党系NGOに責任があるという明らかな虚偽の説を共有し、「これは狂気の沙汰だ」と付け加えた。

テスラに関する肯定的な投稿では、マスクがどんな小規模なXアカウントでも注目する姿勢を見せた。「@Teslaサービスセンターへの抗議や破壊行為、テスラオーナーへの嫌がらせの話は常軌を逸している!」と、フォロワー5,000人未満のブルーチェックユーザーが日曜日に投稿。「みんなで団結して、この攻撃に立ち向かおう!」添付画像にはテスラのロゴと「テスラを支持しよう」というスローガンが表示されていた。マスクはこれを膨大なフォロワーに向けて再投稿したが、その反応も翌日の230億ドル(約3兆円)の損失を防ぐことはできなかった。

From Rolling Stone US.

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