「女性の身体に興味が…」重度障害で全介助の20代女性に約5年にわたり性的暴行…元介護職員の男の裁判 法廷で被害女性の母は涙流し訴え…被告が語った身勝手な動機

重度の障害があり、全介助が必要な20代女性に対し、淫らな行為をした罪などに問われている元介護職員の男の初公判が今年2月に新潟地裁で開かれた。男は起訴内容を認めた一方で、被害者の母親と被告人の母親が証言台に立ち、今の思いについて語った。被告人質問では、男が犯行に至った身勝手な動機や被害女性への思いなどについて語った。
準強制わいせつ、準強制性交等未遂、準強制性交等、不同意性交等、性的姿態等撮影、不同意性交等致傷の6つの罪に問われているのは、新潟市南区に住む元介護職員の細海敏也被告(44)だ。起訴状などによると、細海被告は2019年から約4年半の間、重度の障害があり、全介助が必要で抵抗ができない20代女性に対して、デイサービスの送迎時に自家用車を三条市内のパチンコ店の駐車場に止め、その車内でわいせつな行為や淫らな行為を繰り返し、また怪我を負わせ、その行為を動画撮影した罪などに問われている。初公判で起訴内容についての認否を問われ「間違いありません」と答えた細海被告。今回の裁判では、細海被告が警察に自首した2023年12月14日の事件以外の事実について、自首が成立するか否かと量刑が焦点となっている。
細海被告は2012年8月から障害者支援などを行うNPO法人に勤めていて、事務仕事のほか、利用者が介護施設等と自宅を行き来する際の送迎を担当。被害女性もその時から担当することがあった。また、自宅で母と2人で暮らしていて、家族には知的障害で施設に入所している弟がいた。一方、被害者の女性は生まれてから身体的、知的障害があり、座ることができるが、自立歩行や手足を自由に動かすことができない全介助が必要な状態で、意味のある発語がなく、視線があわないなどの状態だった。被害者の母親によると、女性は感情がないわけではなく、楽しい時やつまらない時は、笑ったり、泣いたりするという。証人尋問では被害者の母親が証言台に立ち、一番伝えたいことを問われると…被害者の母親:私は娘が被害に遭っていることを気づいてあげられませんでした。被告を絶対に許すことはできません。死ぬまで刑務所に入っていてほしい。被害者女性の生い立ちや今回の事件を知った経緯なども裁判で語った。被害者の母親:送迎を利用していた木曜日の後、急に泣き出したりすることが何度かあった。送迎サービスを使うまでそんなことはなかったが、急に泣き出したり、夜眠れない時があった。私が気づいてあげられなかったことや施設に預けてしまった後悔があった。後悔の思いを語る母は、夜も眠れないほどの症状も出てカウンセリングを受けたことも明かした。「娘は長い期間助けを求められなくて、一生涙を流して生きていきます。娘にそんな思いをさせてしまったことを考えながら生きていかなければならない」涙を流しながら、細海被告に対して家族全員の総意で「厳罰を望みます」と話した。
続いて証言台に立ったのは、細海被告の母親だ。細海被告の生い立ちや普段の関係性などについてや事件を知った時のことなどを話した。家族に被害者と同じ障害のある息子(弟)を育ててきた母親として、息子(弟)が同じような目に遭ったらどう思うかと問われ…細海被告の母親:言葉が出てこない。怒ると思います、悲しくなります。すみませんでした。本当に申し訳ありませんでしたとしか言えない。
被告人質問では、スーツに身を包み、うつむいた表情で証言台に立った細海被告。弁護人が事件の経緯について質す。弁護人:事件として罪となっているのは2019年から5年だが、いつからわいせつな行為を行っていたか?細海被告:2018年秋以降くらい。こう述べ、立件された事件の1年前からわいせつな行為を行っていたと明かした。弁護人:なぜ、このような行為に至ったのか?細海被告:自分の性的欲求と女性の身体に興味があった。弁護人:当時、どう考えていたか?細海被告:悪いことをしてしまったと考えていた。犯罪としてもそうですし、被害者に対しても悪いことをしてしまった。また、行為がエスカレートしていったことについては「発覚しなかったという悪い成功体験のせい」とした。弁護人:行為をやめられなかった理由は?細海被告:自分の欲を満たしたかった、利己的だった。被害者に対して、犯行直後は申し訳ない気持ちになった。被害者家族に対しては騙すようになってしまったことを申し訳ない。弁護人:(犯行に)自家用車を使用した?細海被告:はい。弁護人:送迎用の施設の車を使わなかったのはなぜ?細海被告:車いす専用車が限られていた。車の運転がそこまでうまくなかったから自分の車を使った。弁護人:動画を撮影した理由は?細海被告:あとで見返して自分で楽しむため。こう話し、行為後に動画を編集していたことも明らかとなった。
質問は2023年12月14日の事件後、警察への出頭前についても及んだ。弁護人:施設での聞き取り調査は何回?細海被告:全部で2回。12月16日の午前と夜の2回。弁護人:1回目の聞き取りはどう思った。細海被告:やはり何か犯行の証拠が出てきたのではと思った。弁護人:なんて答えた?細海被告:移動の時にバランスを崩してしまったと虚偽の報告をした。弁護人:どうして?細海被告:本当のことを言うのが怖かった。まだ、ごまかしきれるのではと思った。弁護人:2回目の聞き取りは?細海被告:被害者の家族からはその話では納得できない。性的暴行を疑われていると言われ、性的暴行ではなく、ひざの上に落としてケガをさせてしまったと事実と異なることを言った。本当のことを言うのが怖かった。弁護人:聞き取りを終えてどう思った?細海被告:もう隠しきれないと思った。そして、細海被告は12月17日に三条署へ出頭する。
続いて行われた検察側からの被告人質問。検察側:警察に自首した際の取り調べでは、いつ頃からわいせつな行為をしていたかという点で2021年7月頃と話していた。実際とは違っていた理由は?細海被告:「少なくとも」という言い方をした。定かではなかったので、そういう言い方をした。検察側:自家用車とスマホは重要な証拠と言って提出しているが、タブレットやノートパソコンは提出しなかった理由は?細海被告:持って行くことは考えていませんでした。失念していたから。また、逮捕後に弁護人の指示で黙秘をしていた細海被告。途中で黙秘をやめた理由については…細海被告:今となっては黙秘するべきではなかった。
被害者に対しては受け取ってもらえないことが前提ではあるが、謝罪文を書いたという。しかし、弁護人から不十分な内容だと書き直しを言われたと話す。検察側:2023年1月~4月に書いた手紙(謝罪文)のことについて、どういう内容で書き直しになった?細海被告:反省が不十分で、不必要なものが書いてあったりした。そこから弁護人の意見を踏まえ完成したのが4月で、その後、その謝罪文を出したかどうか、本人は確認していなかった。
検察側:裁判で聞いたことや逮捕後の被害者の様子を聞いてどう思った?細海被告:私では推し量れないぐらい、つらい思いをしてきたのだと思った。検察側:被害者はされたことを覚えていると思いますか?被害者に対してどう思いますか?細海被告:覚えていると思います。やはり申し訳ないとしか言いようがない。後悔や反省の言葉を繰り返した細海被告。検察側と弁護側の主張、新潟地裁が下した判決は関連記事で伝えている。

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