元祖「世界一セクシーな航空会社」どんなもの? 実際に乗ったら「やっぱ超トガってたわ…」

世界では「セクシー制服」をウリにする航空会社がこれまで複数生まれています。実はアメリカに、その“元祖的存在”となる航空会社がありました。どういったものだったのでしょうか。
世界では、これまでユニークなコンセプトを持つ航空会社が多く生み出されてきました。このうちのひとつが“セクシー路線”で、露出の激しい衣装が特徴の「フーターズ」が運営するフーターズエアや、「ビキニエアライン」と呼ばれたかつてのベトジェットなどがこれにあたります。こういったセクシー路線の航空会社の“元祖的存在”が、半世紀前のアメリカに存在しました。
元祖「世界一セクシーな航空会社」どんなもの? 実際に乗ったら…の画像はこちら >>PSA機(細谷泰正撮影)。
これがカリフォルニア州サンディエゴに本社を置いていたパシフィック・サウスウエスト・エアライン、通称PSA(現在アメリカン航空の傘下で運航しているPSAとは別会社)です。
この航空会社は1949年に設立され、もっぱらカリフォルニア州内の路線を運航する地域密着型の航空会社でした。当初同社はダグラスDC-4やDC-6、その後ロッキード・エレクトラなどのプロペラ機を運航していましたが、70年代に入るとジェット化も積極的に進め、サンフランシスコやロサンゼルスなどの主要路線に、3発ジェット機の「ボーイング727」を多数運航していました。
しかし、運航路線がカリフォルニア州内に限られていたため、全米路線を持っていたユナイテッド航空やデルタ航空といった大手航空会社に対抗するには、航空運賃を低く抑えるなどの工夫が必要でした。その点、カリフォルニア州法によりPSAは比較的自由度が与えられており、これが同社の競争力維持には追い風になりました。
とはいえ、PSAがさらなる利用者を確保するためには、低価格以外の戦略が必要です。そこで、PSAが掲げたセールスピッチが「最もフレンドリーな航空会社」でした。その一環として、機体は新しいカラーデザインとともにコックピット下にはスマイルマーキングが入りました。
さらに、CA(客室乗務員)の制服も思い切って変更されます。これが「フーターズ」さがらのセクシー路線だったのです。
PSA航空では、ミニスカートやホットパンツにブーツといった大胆なデザインを持つCA制服が導入されました。機体の塗装とCAの制服はともにオレンジを基調として統一する力の入れようでした。オレンジベースでホットパンツというのも、後に登場するフーターズエアとどこか似たようなコンセプトで、まさに元祖といったところです。
ちなみに、筆者は1978年に初めて渡米したときにPSAを利用したことがありますが、ユーモラスな機首デザインのボーイング727とともに魅力的なCAの服装に強烈な印象を受けたことを今でも記憶しています。
この機体に描かれたスマイルは同社のセールスポイントとしても大いに利用されました。同社のテレビ CMなどで使われていたキャッチフレーズは「Catch Our Smile」でした。あえて訳すと「スマイル機に乗りませんか。」と「私たちのスマイルを受け止めて。」の二つの意味が込められています。
とはいえ、先述のとおりPSAはもうありません。
アメリカでは1978年に航空規制緩和法が成立すると航空会社は大競争時代に突入します。さらなる価格競争に加え、路線開設の点でも、規制が緩和されたのです。
そのためPSAはリノやラスベガス、ソルトレークシティーなどにも路線を伸ばし、一時はアメリカ西部全域の路線網を持つに至りました。機材の更新にも力を入れ、主力として運航されていたボーイング727は、双発ジェットのマクダネル・ダグラスMD-80に置き換えられていきました。
しかしこの80年代は、生き残りをかけた競争により疲弊した多くの航空会社が、次々に大手航空会社に買収されていた時代でもあります。PSAもこの動きに抗することができず、1988年にUSAirに吸収されました。こうして旧PSAは航空会社としては消滅してしまいましたが、地域密着型のローコスト航空会社が路線網を徐々に広げて成長するビジネスモデルは、現代のアメリカの大手航空会社も参考にすることになります。
そのことを証明するのが、アメリカの超大手LCC(格安航空会社)、サウスウエスト航空を設立したローリン・キング氏の発言で、PSAの事業形態を大いに参考にしたと明言しています。
PSAはカリフォルニアの気候や風土に相応しい明るくフレンドリーな航空会社でした。会社そのものは消滅してしまいましたが、そのDNAは未だにアメリカのLCCに残っています。

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