女子選手の性的写真投稿、プロレス団体が和解成立を発表「珍しい条項も定められた」東京地裁

女子プロレスの試合中、選手の下半身など性的な部分を強調する画像を撮影し、SNSに投稿したとして、ワールド女子プロレス・ディアナと選手1名が投稿者に対し、損害賠償を求めていた裁判で2月17日、東京地裁で和解が成立した。
これを受け、ディアナの不破大志氏と代理人の小沢一仁弁護士が27日、都内で会見。
小沢弁護士は和解について「結構な時間がかかってしまったが、細かい内容まで取り決めてまとめることができたので、中身としては勝訴的和解だと思う」と評価した。
Xで取り下げ要請も、話し合いは平行線に ディアナでは2023年4月ころから、試合中の女子選手の身体の一部を強調している写真がSNSなどに投稿されているのを確認していた。
不破氏によると、ファンからも苦情を受けており、おおむね投稿者の目星がついていたことから、Xのダイレクトメッセージ上で写真の取り下げを要請したものの、話し合いは平行線のまま終わったという。
そこで、ディアナ側は同年6月、投稿者の発信者情報開示命令を申し立て、同年11月に発信者情報を特定。2024年1月23日に発信者を提訴した。
解決金計100万円、出禁処分など定めた和解条項で合意 裁判でディアナ側は、こうした撮影の防止対策を講じるための費用をかけたとして営業権の侵害を主張。選手側については人格権の侵害を訴えていた。
一方、被告側は特定の部位を撮影する意図を持って写真を撮影し、投稿したわけではないと主張。
また、Xでは画像を投稿すると、投稿ページにはその一部分のみ表示される仕様になっており、画像全体を表示すれば身体の一部を強調した写真ではないことがわかるとしていた。
代理人の小沢弁護士は「裁判官からは、団体の営業権侵害と選手の人格権侵害について認容する方針だと聞いた」としつつ、和解に至った経緯について次のようにコメントした。
「裁判官からは、和解による解決の方が細やかに条件を付けられるため、本件には適しているのではないかとの話をいただき、和解を成立させました。
本件の和解条項は全部で15項目あり、まず金額面では、団体と選手それぞれに対して50万円、計100万円の解決金の支払いが命じられています。
また、被告がディアナの興行には訪れないとの確約、いわゆる出禁処分も定められました。
出禁処分自体はある程度予想された範囲内でしたが、ディアナ以外の興行においても、ディアナ所属選手がリングに上がっているときには、被告は会場から一時退出するように、という比較的珍しい条項まで定めることができました。
そのほか、ディアナに関する情報発信の禁止や違約金についても定めていますので、被告による類似の被害は今後なくなるのではないかと考えています」(小沢弁護士)
「各競技、団体でも同じように選手を守って」 この日、会見に出席したディアナの不破氏は、本件がプロレス業界やその他のスポーツ・アスリートに与える影響について「一定の抑止力になってくれるのでは」として、以下のように続けた。
「一般の人にとって、100万円の支払いはなかなか大変なことですので、抑止力になると思います。われわれとしては、被告本人を厳しく制裁するのではなく、あくまで啓発していきたい気持ちの方が強いです。
また、このような撮影・拡散は極論を言えば、選手のパフォーマンスにも影響を与えます。
身体をかけて競技に望む選手が、余計なことを考えず、プレーに集中できるようにさせてあげたいというのがフロントの思いです。
万が一にも個人の欲求が、選手の怪我や、競技の断念につながるようなことは絶対にあってはならないと考えています。各競技、団体でもわれわれと同じように選手を守ってほしいです」
「一概に線引きするのは難しい」 また、不破氏は今回の和解に至るまで、撮影に関するガイドラインを策定したり、開示請求などの手続きを取ってきたりしたことで、「会場の空気が変わってきた」と話す。
「もともと、プロレスファンは愛情が深く『自分たちのフィールドが変な目で見られるのはいやだ』という正義感や良心がある方も多いです。
それでも、今回の性的写真の投稿について、本人に直接指摘するのではなく、われわれに意見を伝えてくれたことで、観客同士の余計なトラブルは発生せずに済みましたので、その点でファンのみなさまに感謝しています。
さらに、われわれが対策をとりだしてからは『この写真はちょっとやめてくれ』という意見が、以前よりも通りやすくなりましたし、お客さん同士でも、ちょっとずつ、どういう写真を撮っているのかを気にかける方が増え、性的な写真は撮りづらくなっているのではないでしょうか。
今後も継続して、性的な写真を撮影すると、本件のように法的トラブルに発展することがあると示していきたいです」(不破氏)
さらに、不破氏は法制度のあり方についても言及した。
「本件を通して、写真のどういったアングルが駄目だと一概に線引きするのはすごく難しいと感じました。
われわれとしても、一足飛びで法的手段を取ることを考えているわけではありません。
やはり主催者側と撮影者でコミュニケーションをとって、主催者側が『この写真はやめてほしい』とお願いした時には引き下がっていただきたいですし、引き下がらない場合には罰せられるような法律があれば、もっとスマートに対応できるのではないかと思いました」(同前)

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