[社説]ウクライナ終戦交渉 「公正な解決」の道探れ

戦争をどのように終わらせるかという問いは、誰の主導によってどのような戦後秩序を形成していくのかという問いと密接に関係する。
ロシアによるウクライナ侵攻を巡ってトランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領と電話で協議し、戦争終結に向けて米ロが交渉を始めることで合意した。
トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の前に、ウクライナ側との意見調整抜きに、プーチン氏に電話し交渉開始に合意したのである。
ここに、トランプ政権による和平仲介の性格が端的に表れている。
ロシアを停戦交渉の席に着かせるためトランプ政権は、ロシア寄りの姿勢を示してきた。
「ウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)への加盟は現実的ではない」
「ロシアに併合された南部クリミア半島を2014年以前の領土の状態に戻すのは非現実的である」
プーチン氏にとっては、ウクライナや欧州抜きに、望む方向で米国と直接交渉をする機会を得たことになる。
ウクライナや欧州には、米ロ主導で終戦交渉が進めば侵攻を受けた側のウクライナが大幅な譲歩を迫られるとの警戒感が強い。
欧州6カ国の外相が共同声明を発表し、「いかなる交渉もウクライナと欧州は参加しなければならない」とくぎを刺したのは、当事者として当然である。
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米国は戦争終結後、ウクライナに軍を派遣しないと語っているが、ウクライナの安全を誰がどのような形で保障するのか。
ロシアの再侵攻に対する明確な歯止めがなければウクライナは納得しないだろう。
ロシアが併合を宣言したウクライナ東部・南部4州の帰属はどうなるのか。これも現時点でははっきりしていない。
ウクライナでは、長い戦争による厭戦(えんせん)気分が広がり、和平への道筋を示すことができない政権への批判も高まっているという。
米国の軍事支援がなければ戦争を継続することができない状況に追い込まれているが、トランプ政権は支援継続には至って消極的だ。
戦争が長引けば長引くほど、ウクライナ側の犠牲は確実に増えていく。和平の機会を失ってはならない。
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トランプ氏は、プーチン氏との対面会談を近くサウジアラビアで開く可能性があると述べた。
ゼレンスキー氏抜きで、ゼレンスキー氏の同意を得ずに、両者が何らかの決定を行えば、この交渉は失敗するほかないだろう。
求められるのは、大国の力の論理による解決の押し付けではなく、国際法に依拠した公正な解決だ。
パレスチナ自治区ガザとウクライナの戦争終結の形は、これからの世界の在り方を大きく左右する。
歴史の評価に耐えられるような取り組みを米国に求めたい。

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