ある有名な女優が、悪人を演じる際にどうなりきるのかと問われ「自分の中の普段は凍結してある黒い部分を、限界まで膨らませるだけ」と話していた。
黒を白に偽装することに何の罪悪感も持たずにのし上がる弁護士の兄と、医師として常に患者に寄り添い信頼される人格者の弟。互いに相いれなさを感じて、兄弟仲は良くない。そんな2人にコントロールできない出来事が襲いかかる。
終始、「あなただったら、どうする」と突き付けられながら見るが、どこかで「私には起こり得ないこと」と逃げている自分がいる。
真相がどこにあるかも分からないまま、自身の信念と愛という形のないものに翻(ほん)弄(ろう)される様が、不穏な空気とともに丁寧に描かれる。
オセロのように、兄弟の色が入れ替わった瞬間に訪れる衝撃のラストシーンに声もない。
(スターシアターズ・榮慶子)
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