[社説]米事務所で百条委 問われる県の説明責任

株式会社として事業者登録するなど県のワシントン事務所を巡る一連の問題について、県議会は「伝家の宝刀」とも呼ばれる百条委員会の設置を決めた。
米軍基地から派生する問題を米政府や議会に訴える拠点として事務所が果たしてきた役割は小さくないが、だからといって手続きの瑕疵(かし)を見過ごすことはできない。
玉城デニー知事は違法性の指摘にきちんと向き合い、行政の信頼回復に努めなければならない。
百条委は、自治体の事務に疑惑が生じた際、議会が事実関係を調査するため、地方自治法100条に基づき設置する特別委員会だ。調査に当たって関係者の出頭を請求できるほか、正当な理由がなく出頭しない場合は、禁錮や罰金に処せられる。「伝家の宝刀」に例えられるのは、その権限の強さからである。
ワシントン事務所を巡っては10月、県が営業実態のない株式会社として設立していたことが発覚した。
事務所は翁長雄志前知事時代の2015年に設置された。それから9年余り。職員2人が駐在し、年間約1億円ほどの予算が使われているのに、玉城知事も知らなかったというのは言葉を失う。
それだけではない。公務員と民間企業役員の二つの身分を有する職員が、地方公務員法に基づく兼業許可を得ていなかったことも判明。取得株式を公有財産として管理していなかったほか、地方自治法が規定する議会への報告も怠っていた。
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当初県は、非課税事業者として登録を検討したが、「ロビー活動などは政治的活動に当たる」と米側から指摘を受け、株式会社の形態を取ったという。
ただ設立に関する文書が残されていないというから、公文書管理のずさんさにも驚く。文書がなければ、それが適切だったと証明することも難しい。
11月定例会では、事務所の設立決裁者などに関する質問で執行部の答弁に食い違いが生じ、空転する場面もあった。
基地問題に関する情報収集、発信を担う他県にはない組織とはいえ、手続きの不備、運営の不透明さに対する責任は免れない。
玉城知事は、反省の言葉を口にし、再発防止策を指示したと説明する。
しかし発覚から約2カ月。本来なら百条委の設置を待たず記者会見を開き、問題点や疑問点に答え説明責任を果たすべきだった。
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県議会に百条委が設置されるのは14年以来、4度目。
百条委設置を求める動議は、玉城知事を支持しない県政野党、中立の賛成多数で可決された。
ワシントン事務所は、新基地建設阻止を掲げる県政にとって、「沖縄の声」を届けるための重要な拠点である。
新基地に対する与野党のスタンスの違いから、それを政争の具にすることだけは戒めなければならない。
県民の側に立った公正かつ冷静な調査を求めたい。

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